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根源の魔術師  作者: 蓮華
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外出許可

「オレゴン、外出許可が欲しい。街を見たいんだ」


 暫しオレゴンが考えた。


「分かった。外出は許可しよう。レンテとリノに付き添いを任せる。二人共、頼んだぞ」


 反論しなかったが、レンテもリノも不服げな表情で渋々頷く。


 勝手な行動を控える意思表示をしたのに。悔しさが胸に生じる。


「いつセナードが仕掛けてきてもおかしくない。これは貴殿を守る為だ。私は信用している」


 そう言われると言い返せなくなる。大人しく黙ったまま不満を堪えた。



 朝食を食べ終えてナシャアに呼び出された。飾り気なく整然として過ごしやすそうだ。


「急にわざわざお前の部屋に、呼び出して何の用だ」


 フィネメズもついて来ている。興味深げに部屋を観察する。


『ナシャアのにおいで溢れてるぞ』


 精霊は人より嗅覚、視覚が優れる。


「いい匂いか」


『ジェーンの匂いの方が好きだ』


「フィネメズは此奴が大好きだもんな」


 笑みを含むナシャアが金庫を開けた。中には束になった紙幣がたくさんある。通貨の単位はイーオという。


「エイラと俺は勝負をしていた。仕様もないと思うかもしれない。どちらがジェーンの為に、お金を多く貯められるか。お前が戻って来た時、ある程度は必要になるだろ。その時まで貯め続ける約束が、いつしか勝負みたいになった。勝敗はもうついたも同然だった。聞きたいか?」


「別に」


「どちらに勝っていて貰いたい」


「どっちでもいい」


 自分の為に二人がと思うと、嬉しさや気恥ずかしさ、申し訳なさが心中でぐるぐる回る。


「口にしなくても分かっている。ジェーンはエイラに勝っていて欲しいんだろ」


「そんな事ない」


「本当か」


 目を凝らして見つめるナシャア。視線に耐えきれなくなり先に逸らす。


「やはり親には勝てないな」


 少年の心をまるでお見通しみたいな言い方。つけあがるから言葉では絶対教えない。


 同じくらい二人が好きである。


「エイラの圧勝だ」


 手を掴んで紙幣を数枚渡した。一見ただのお金でも男が、貯めてくれたお金である。


「我が子に小遣いを渡す、気持ちを味わえるなんて不思議だ。おつりは返さなくていいぞ。何でも好きな物を買え」


 髪をくしゃくしゃにされた。


「ナシャア、有り難う」


「声が小さい」


 眉を寄せると眉間を突つかれた。


「有り難う!!」


 やけくそになって大声を発した。恥ずかしいのに、二度も言う羽目になった。火照った顔をからかわれる前に退出する。


 早歩きで玄関を出て、リノとレンテの所へ急ぐ。


「遅い」


「僕達を待たせるな」


 ナシャアの部屋に呼ばれた為、二人を城門付近で待たせておいたのだ。


「それ程、待たせた覚えはないぞ」


 揃いも揃って気が短いなと思ったが内に秘める。言えば反抗してくる。


 門衛に外出の旨を伝え、城門を開けて貰った。


 ブローズ城はリミュエールの一番奥にあり、街は大きな扇状に広がる。


「オレゴンの命令だから仕方なく、ついて来ているのよ」


「貴重な時間を割く身にもなってみろ。感謝しろ」


 二人の文句を聞き流す。我慢だ。


 灰色の道はひび割れ、微かな足跡や車輪の跡が残り、人が生きた証としてある。


 家々は歳月が流れた分古び、植木鉢に花が咲き、干された洗濯物は風に揺れる。


 人が住んでいない家をいくつも見た。取り壊さずそのままだ。


 ブイオかオスクリダに暮らす人も存在する。改めて痛感した。


「寂しくなったな」


「そんな事を思う奴なんかもうあんたくらいよ。皆、リーレを忘れて日々生きている」

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