隣同士の部屋
「フィモ、あれは精霊よ」
フィモの天然発言にリノが呆れつつ訂正する。
「フィネメズをよく知っているのは、ユール王とアクミス王子、エイラ、俺だけだ。皆に紹介してやれ」
余分な事をナシャアが言い出した。
サロフには紹介していたが、皆はまだ知らない。精霊もシヴェルティアの魔術師が誰か知らない。
「此奴は俺の相棒で名はフィネメズ」
『正式名を言え』
「お願いする時は言って下さいだろ」
注目を浴びる状況が続く。オルターは一度穢らわしそうに、見て黙々と食事をした。
「フィネメズワルシャワ・リヒズ・カミティヴァウト・メイハクナ・サース・ティン・ザウ・レゾールション」
しんとなる。当然の反応だろう。
微笑むブルーム。記憶力が優れた彼は覚えたらしい。
手短に仲間を紹介した。脳裏はどのケーキ、どの果物を選ぶかで一杯になり、聞いているかあやふやだ。
『どれもおいしそうだな。まずショートケーキとチョコレートケーキ。苺と葡萄、それからメロン』
注文通り大皿に取って椅子に腰掛けた。
「最初に何を食べるか決めたぞ。ショートケーキにのった苺からだ」
「単体の苺を差し置いてケーキの苺……。普通最後だろ」
『フィズは好きな物から頂く。こんなお前とのやりとりが懐かしい』
好きな物をいつ食べるかでもめた事があった。フォークで苺を刺して口元に近づける。
『いい香りだ』
匂いを楽しんでから精霊は苺を食べた。
「美味しいか」
『美味しい』
クリームがついたスポンジケーキを一口サイズにして、催促する為どんどん与えた。
「お前も食べろ」
アクミスが全く食べないジェーンを不服に思う。
「ああ、分かった。次は俺の番な」
スープを早々と飲む。次は葡萄を欲しがり、皮を剥き種も取った。
「下僕みたいだな」
興味深げに見ていたナシャアが呟く。
「俺は此奴の下僕じゃない」
元より食べさせる事がほとんど日常だった。人形をとってくれれば、その必要もなくなるのだが。
『ジェーンはフィズの食べさせ係だ』
偉そうに上を向く。
左の方から羨ましがる視線を感じた。サロフとラズカだ。器用にチョコレートケーキを左手であげつつ、右手で食事をとる。行儀が悪いのは承知していた。
最低限の食べ物を胃に収め、オルターは席を立つ。
「これにて私は失礼させて頂きます」
「具合でも悪いのか」
「いえ、ご心配には及びません」
王と王子に恭しく礼をしてから去っていく。
『フィズ、彼奴が大嫌い』
「今は食事に集中しろ」
男が負の感情を抱いている事くらい精霊は見抜き、ジェーンに対する殺意に怒っていた。
本人がいる前でアクミス、ユールは思い出話を始める。即刻やめて欲しい。
「お前の部屋はレンテの隣だからな」
「えっ」
「覚えやすいだろ」
さらっとナシャアに重大な事を言われた。
「隣同士、仲良くしろよ」
「絶対無理だ!」
「絶対無理です」
聞き耳を立てていたレンテと揃った。
「息ぴったりだな」
「偶然だ」
「偶々です」




