晩餐会
「邪魔だ。どけ、小僧」
通れるスペースがあるのに、現れたソリクはわざわざ言い放つ。
「因縁つけるな」
ジェーンの不満を取り合わず椅子に座す。あの男が何を考えて生きているのか、理解できる自信が微塵もなかった。
遅れてブルームがやって来た。息が乱れ急いでいたと分かる。
「いつまで立っている。ジェーン。こっちに来い」
手招きするアクミス。集いの間に入った瞬間から話したそうだった。
「王子からのご指名だよ」
ほんの少し寂しげな表情になり、内面で首を傾げる。サロフがそんな顔になる訳が思い当たらず、謎だけ心中に残った。
アクミスの隣に腰を下ろした。
「お前の隣って誰か座っているのか」
「いや、決まった人は座らない。ナシャアかオレゴンか、話し相手になってくれる」
『ジェーン。フィズを誉めてくれ。アクミスのお守りをしたんだぞ。たくさん遊んでやった』
話に割り込むフィネメズは、王子の腕から抜け出してジェーンの膝に乗った。
「フィネメズ、お守りは大変だったか」
『彼奴の相手は疲れる』
「お前が俺に遊んでくれ、構ってくれとうるさかったぞ」
真実の呟きは精霊によって柳に風と聞き流された。
耳を撫でるとくすぐったそうにして、手の平へ擦り寄る。甘える時の仕草だ。
「まだラズカがいないようだが」
一向に姿を見せない少年をユールは気にかけている。
「リノ、ラズカを呼びに行ったんだろうな」
「私を疑うのならフィモに聞いて」
ナシャアが確かめるように聞くとリノは憤慨して眉を吊り上げた。
「リノちゃんと一緒に呼びに行きましたよぉ。お部屋から返答がありました」
思い出す顔つきでフィモは「どこか声に元気がなかったですぅ」と付け足す。
「それはジェーンの所為です」
余計な言葉をサロフが述べた。
「事情を知っておるのか」
一歩踏み込みそうなオレゴンの問いに焦りが生じる。
「ナイシエ、絶対言うな」
「君と僕の秘密って事だね。うん。いいよ」
嬉しそうに言った。ジェーンは苛立つが、これで口止めができたと己を抑える。
「後でこっそり教えてくれ」
「誰が教えるか!」
隣に座るナシャアの耳打ちに外方を向く。話したら笑われ、話したら最後、広まってしまう。
「先に始めてくれ。俺が呼んで来る」
王を直視してフィネメズを椅子に置いた。気配さえ読めば、どこの部屋にいるか感知可能だ。
扉を開けて気配を読む必要が無くなった。何故なら目的の少年が前に立っていた。
「皆、集まっているぞ」
「ああ」
目線を逸らすラズカとの間に気まずい雰囲気が漂う。なかなか謝罪できずどうにか囁く。
「あの時はかっとなって言い過ぎた。悪かった」
言葉は鋭い刃。灰花に教えられた。心を傷つける危険な怖い凶器となりうる。
だから、慎重に選びなさいと。言葉で人を傷つけてしまったら素直に謝りなさいと。大切な灰花の教えは記憶に刻まれている。
「我の事を嫌いになて、いないのだな」
瞳を凝らして真意を問い質す。仕方なく下に軽く動かし、背中に伝わる視線が痛い。
「よかった!」
抱きつこうとした為、危機を感じて即座に扉を閉めた。呻きが聞こえてくる。
「閉めるなんて酷い。でも、恥ずかしがって暴力的に拒む所も素敵だ」
「お前、どこかで頭でもぶったか」
顔を押さえながらも、自分が美しく見える角度とポーズを作った。
「いいや、ぶっていない」
シヴェルティアの仲間には、どうしてこんなにも疲れる、相手が揃っているのだろう。




