表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
根源の魔術師  作者: 蓮華
47/70

歓迎と悪意

 食事場所は集いの間と呼ばれ、広さは楽々と百人以上入る。


 エイラがシヴェルティアの面々と朝、昼、晩、食事を共にしていたのは知っていた。


 ジェーンは人の集まる所が嫌で落ち着けず、大抵の日、わがままでも給仕係にお願いし、時には自ら運び、食事を自室で食べていた。


 その所為でいつしかアクミスもつき合うようになり、たわいない会話を交わした。


 楽しかった思い出だ。セシェムもよく食事を共にしてくれた。


 集いの間で食べた事は五回もあるか、ないかくらいだった。ユールとエイラ、ナシャアも一緒に食べたがっていた。


 リノは赤茶色の扉を開け、続いてフィモが中へ入る。


 足を止めたジェーンにサロフは「どうかした?」と問う。


「俺、誰かと一緒に食べる温かみを分かっているつもりだけど、こういう集まりの場が苦手で嫌いだ」


 自分はどちらかと言えば、多数より少数と関わってきた。心の底で静寂と孤独を好む傾向にある。


 幸せを感じていても本当に喜べない。理由は生を受けてから既に決まった境遇だろう。


 幸せになれない。なってはいけないと思って阿呆らしくも虚しくなる。


「大丈夫。僕がついているよ。安心して」


「それ初対面の奴に言う言葉か?」


「君はやたら初対面にこだわるんだね。早く僕を名前で呼んで、親友から大親友に繰り上げて欲しいな」


「いつお前が俺の親友になったんだ」


「目と目が合った瞬間だよ」


 さも当たり前のように話した。呆れて物が言えず、口を閉じたままでいた。


「何、二人して扉の前で突っ立っているの。早く入りなさい」


 腕を組んだ仁王立ちのリノが促す。これ以上待たせると、彼女の怒りに触れてしまう。


 ジェーンは詰まる息を吐き出し、サロフと入室した。


 カットグラスに多くの電球を組み合わせ光る。金や銀の装飾がきらびやかなシャンデリア。椅子に刻まれた背中部分の紋様は、一つとして同じものはなく異なる。


 長い食卓には純白のテーブルクロスがかかり、色鮮やかな花で所々飾られていた。


 銀食器には肉、魚、野菜を主とした料理で盛られ、焼きたてのパンや飲むと温かいスープ。デザートに新鮮な果物、見た目が凝ったケーキもある。


 ユールは皆が見える左側の縦位置でしかも一番端だ。近くにフィネメズを胸に抱いたアクミスがいる。


 そして枯れ草色の髪をした、オルター・ガストも……。冷えきった目が「お前は場違いだ」と言わんばかりで、軽蔑と嫌悪が伝わってくる。


 反抗的に睨む事もできたが、敢えて無関心を装う。


 先程からユールは和やかに微笑み、ジェーンの言葉を待ち望んでいた。


「俺の為に盛大な晩餐会を開いてくれて、心底では感謝している……なんて、言うと思ったら大間違いだぞ」


「そのような言葉を端から期待していない。実は些か期待しておった。そなたが嫌がるのは百も承知だ」


 魔術界に戻って来た少年は必要とされ、シヴェルティアの魔術師となり迎えられた。


 王は晩餐会という形で歓迎の気持ちを表現する。


「無礼だぞ。貴様!」


「オルター、ジェーンを無礼と申す事は許さん」


「これは大変失礼致しました」


 頭を下げて許しを請う。必死な様子は絶対服従。


 瞳の中で滾る怒りが暴れ、オルターは唇を噛み締めた。


 密かな怒りの矛先が此方に向き。殺意も向けている。


 心に痛みはなくむしろ冷静だった。自分はそんな感情で胸に苦痛を伴う柔ではない。昔からその類の感情には慣れていた。


 ナシャアとオレゴンが談笑している。


 偶然レンテと目が合った。彼から視線を逸らす。


「マカレル」


 注意を引きつけ、手の甲を前へ出して見せつけた。


「宣言通り、魔力封じは解いたぞ。勿論、自力でな」


「それくらい自分で解けて当然だろ」


「お前は簡単に解けるのか」


「三秒あれば十分だ。どうせ、女顔は三秒以上もかかったんだろ」


 むかつく。口にしたいが声に出したら、負けたような気になるので堪えた。


「皆、自分の席に座るのですぅ」


 にこにこ笑うフィモはリノを引っ張りながら席につく。隣同士みたいだ。


「君はどうするの?」


 疎らに椅子が空いていた。人数分より多くある。


「適当に座る」


 オルターの隣に座らなければ、基本的どこでもいい。あと、レンテのそばも避けたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ