前に進む力
「私は喜んでいない。べたべたされたくもない」
裏表がはっきりして言いたい事をしっかり言う質だ。
「所でお前達は何しに来た。喚きに来たのならここ以外でやれ」
「違うわよ!」
ソリクが神経を苛立たせ、リノは否定する。
「皆を呼びに来たのです。集いの場にレッツゴーですぅー!!」
鈍い動作でフィモが拳を真上に突き出す。
「王がシヴェルティアの魔術師に、集まるよう催促しているの」
「問題でも起こりましたか?」
案じる色を滲ませてブルームは答えを求める。
「いいえ、いつもより早いただの夕食よ」
男の不安を一掃させ、「伝えたから」と歩き出した。
「待って下さい。ジェーンくん、サロフくんも行きますですぅ」
二人の背中を同時にぐいぐい押し、大好きな少女に追いつく。ぴたっと寄り添う。
「本当に好きなんだな」
見ていれば心の底から伝わってくる。そばにいたいと願う気持ちが。
「彼女達は互いを思いやっているからね」
一瞬眩しげにどこか羨ましげに眺めて、サロフは朗らかな笑みを形作る。
「僕も寄り添っちゃおうかな」
「絶対やめろ」
「少しくらい期待させてよ」
吐息をついた。これから始まる夕食の時が憂鬱で、更に少年は長嘆息する。
四人が出て行き、ブルームとソリクだけが残された。
鮮やかな色がまだ刺激的で痛い程だ。確実に今日は目が疲れるだろう。
彼に取り戻して貰った世界は様々な色に溢れ、こんなにも美しい。
「あんな小さかったルウファスくんが大きくなって、皮肉にもリミュエールへ帰って来ました。僕は再び彼に会えた事に感激して、実は涙をずっと堪えていたのです。違う形で泣いてしまいましたが」
リーレが無くなったと知った時のもどかしさ、悲しみは推し量れない。だが、絶望して後ろを向き、立ち止まったままでいるはずがない。
立ち止まるくらいならジェーン・ルウファスは前に進む。
たとえ道が険しく困難だとしても――。
「彼の魔力は十年前から、成長を止めていたにも拘わらず強い。剣の魔術師だからでしょうか。それとも天賦の才でしょうか」
磨けばもっと強くなれる。それこそ世の理を歪めるくらい。不可能を現実とする。言わば神。
「私が知る訳がない」
ソリクは立ち上がり二、三歩進んで肩越しに振り返った。仮面の所為か無期的で冷たく感じる。
「あれはセナードの手に余るものだ」
分かりきったような口を利き、カツン、カツンと足音が遠ざかっていく。やがて聞こえなくなった。
一人だとより静寂が寂しい。
「同感です」
書見台にあるティーカップをつくり出した空間の歪みに入れ、そこは厨房の洗い場へと繋がる。シュガーポットには数粒の砂糖が辛うじてあった。
「狂いの甘党好きですね。貴方は」
友人は甘い物を糧として生きている。健康状態が心配だが、本人は構わず食べる。控える事をぜひとも覚えて貰いたい。
苦笑を漏らすブルームは蔵書室から立ち去った。




