やたら長い時間
忽ち今まであった印が消え、体内に巡る魔力を強く感じた。
リバースは時を逆に戻す。自然の法則に逆らう為、抵抗力が生まれ、時を進めるより難易度が上がる。
時を逆戻りさせ、魔力封じ自体を無かった事にした。
「よし」
後からやって来る喜びを噛み締め、満足感に浸る。
「しょぼいリバース如きで何を喜んでいる」
「喜ぶのは勝手だろ。リバースは初めて使ったし、枷がある状態で成功したんだ」
「ひょっとして、誉めて欲しかったのか」
「別に誉めて欲しくなんか」
外方を向くと「分かりやすい奴だ」と笑声を漏らす。ソリクに頬を抓られる。
「痛いからやめろ」
むっと手を払い除けて、眠るサロフを視界に入れた。ふと記憶が蘇る。アクミスもつまらなくなると、蔵書室だろうが構わず寝ていた。
性格は対照的なのに妙な所が似ている。
「待って、行か」
くぐもって少年の声が聞こえる。とても苦しそうだ。
「うぅ、わあぁ。僕を置いて……」
うなされながら寝言を言う。
心配になって体を揺すり呼びかける。
やがて顔を上げ目を瞬く。額に冷や汗が浮かぶ。
「うなされていたぞ。大丈夫か」
「夢を…見ていたんだ」
彼はぼんやりしている。心ここにあらずといった感じだ。
「ナイシエ、その年になって寝言は恥ずかしいぞ」
「寝言か。恥ずかしいなぁ……」
ソリクを見遣り弱々しく笑う。ジェーンを見つめ、どこか安心している。
「本当に大丈夫か」
「うん」
「なら、いい」
再び腰を下ろし考え込む。
いつの間にか気になっていた。俺の心を掻き乱す此奴は何だ。自問自答しても答えは得られなかった。
「あれ、ブルームは?」
「へなちょこには飲み物を取りに行かせた」
「全く人使いが荒いな」
男の性格を知る少年は本心を零した。
「お前が寝ている間に魔力封じを解いた」
「よかったね。僕も嬉しいよ」
魔力封じの印が消えた、手の甲を見せるとサロフは喜んだ。
「小僧はお前にたっぷり誉めて貰いたいそうだ」
「誰がそんな事言った?話をでっち上げるな」
「頑張ったね。頭を撫で撫でしてあげようか」
ソリクの言葉を真に受けた彼が手招きする。
「結構だ」
「本当は撫で撫でして欲しいくせに」
椅子から立ち、ジェーンの隣に来た。迫る手を邪険に払う。
「年上だからって、俺を年下扱いするな」
「君と僕は対等な立場だ。大人しく頭を撫でさせてよ」
「絶対嫌だ。あっちに行け」
「ジェーン、ナシャアには甘えて僕には冷たいんだね」
悄げた顔を俯かせふてくされる。
俺がいつナシャアに甘えたんだ。口から出かかった言葉を飲み込み、脱力感に両腕と顎を机に乗せる。
面倒くさい星回りに生まれた。
隣から送られ続けるサロフの構ってくれが、込められた視線を無視。
退屈凌ぎなのかソリクが、髪をつんつん引っ張るが無視。
此奴等は何が目的だ。切実な問いを発したい。短い時間がやたら長く感じる。




