冬の雪
「言わない」
「本当!?」
「ああ」
「優しい君が大好きだ!!」
後ろから喜びで目が輝く少年は抱きついた。
「くっつくな!気色悪い事を平気で言うな」
「変な意味はなく、友達以上に大好きだ」
「そこは友達としてだろ」
人をからかい遊ぶ感覚で楽しむ、爽夜の性根は腐りに腐っている。
空から雪が舞い、ふわりと落ちてくる。どんどん数を増していく。
雪には種類がある。冬に降る牡丹の花弁みたいな牡丹雪、細かな細雪。春はうっすらと積もって溶ける淡雪、雲をちぎったみたいな綿雪など。
種類は知っている。現在降る雪が何に該当するか、分からなかった。
陣が分かるのは淡雪と粉雪くらいだ。
一面積もった雪で景色は白銀の世界。白銀色に覆われるだけで、いつもの光景が違って見える。
「雪は儚いよな」
手を広げ落ちてきた。ひんやりする雪の一片が体温で溶けた。その一片は雪の結晶が併合し、数百の単結晶が集まっている場合もある。
「儚いからこそ、綺麗で、美しいんだ」
天を仰いだ爽夜が微笑む。額に舞い降りた雪は水になり、鼻と頬を伝い落ちる。
不覚にも数秒間、凝視してしまう。
「そんなに熱い視線を注がないでおくれ。ジュリエット」
愛おしげに見つめる、彼を冷え冷えとした目つきで睨む。
「誰がジュリエットだ。今すぐ地獄へ落ちろ。琴爽夜」
「琴爽夜じゃなくて、ロ・ミ・オ」
「俺が地獄に落ちて欲しいのは、ロミオじゃなくてお前だ」
「分かっているよ。本当は微塵も思っていないんだろ」
真面の〝ま〟の字もない人間と過ごす日は酷く疲れる。
「できれば、貴方様と肩を並べて歩きたくありません。ですから、どうぞお先に進んで下さい」
「俺に敬語を使うなんて……尊敬!?」
「尊敬だなんて滅相も御座いません。軽蔑です。いいから、早く前へ行け」
有無を言わさぬ態度で陣は顎を突き出して前方を指し示した。
訝しみながらも爽夜は先を歩く。
「あっ」
唐突に声を上げた。
「後ろから襲うつもりだな。陣って以外に大胆」
「お前なんか襲うか」
眉間を狭める。丸めて雪玉を作った。日頃の恨みを込め、勢いよく投げつけた。
雪玉はコートを着た少年の背中に当たり、跡を残し砕けてしまう。
「よくもやったな」
爽夜も雪玉を陣へ放つ。難なく躱して次の攻撃を実行に移す。
二人だけの雪合戦が始まった。手の平が赤くなってひりひりする。構わず投げ続けた。
太股に当たったお返しに顔を狙う。
腕を交差させ爽夜は命中を避ける。
「残念でした」
腹が立ったので集中的に顔へ投げた。
「もし当たったらどうするんだ」
「それが嫌なら防げよ」
顔面に見事命中させ、内心でほくそ笑む。
暫く接戦になり少年達は寒さを忘れ、肩を上下させた。
「引き分けでいいや……」
陣は石塀に手を突き、冷たくなった手は感覚が無くなっている。
「自分から始めといて引き分けか。君は身勝手だな」
「じゃあ、爽夜の勝ちで…つ、めた!!」
雪で冷えた手で首筋に触れた。
「人の体温って温かいな」
「やめろ」