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根源の魔術師  作者: 蓮華
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帰って来たブローズ城

 外方を向くジェーンは無視した。


「我が息子は強情だな」


 人差し指を手前にエイラが動かすと、体が凄まじい力で前へ引っ張られた。急に勢いはなくなり、通路に膝を突く。


「俺は残る。あんたが行けばいい」


 彼ならもう一度鉄格子を消せるはずだ。


 男は首を振る。玉虫色の瞳が「言う事を聞け」と直視していた。


「強情なのはお互い様だ」


 少年は立ち上がった。通路は激水の所為で水浸しになり、制服を着た数人の男が水に流され、入り口付近の壁で気を失っている。


「なぁ、あそこに倒れて……」


「城を警護する衛兵だよ。僕達は城門から強行突破して牢獄を捜し当てた。守りが強固で辿り着くのに苦労した」


 言葉の途中でサロフが話し始めた。


「何で俺が捕まっている事が分かった」


「途中から現世界にいる君の姿は、鏡を使った透視で確認していた。転送地が変更させられ、ナシャアさんは焦った。ブイオの様子を探ろうとし、何者かに邪魔されてルウファスくんの安否が分からなくなった。ナシャアさんがどうにか居場所を掴んで、リノと助けに来た」


「ルウファス、さっさとサロフの後ろに乗りなさい」


 リノは命令口調だ。ジェーンが嫌でも従う道しかなく、サロフに引き上げて貰った。


 炎のように燃える黒い鬣は熱くない。


「腰に掴まっていいよ」


「いや、肩でいい」


「遠慮は無用だ」


「お前、男と密着して嫌じゃないのか」


「別に嫌じゃない」


 さらっと少年が言い放った。肩から手を離してローブのフードを掴む。


「遠慮しなくていいのに」


「そいつ、女に興味なくて男にあるから。女顔のあんたはうってつけの獲物ね」


「……今の状況で信憑性がありそうな事を言うな!」


「嘘を教え込むなんて酷い。僕は女性が好きだ。うーん。でも、ルウファスくんは特別かな」


 真意が読めない言葉に寒気を感じた。


「行くわよ」


 少女が手綱を引いて歩みを進めた先は壁だ。


 迷わずサロフも進ませる。


「そっちは壁だぞ」


「黙って見ていれば分かるわ」


 声が苛立っている。精神の集中を妨げられたからだ。


 最後にエイラの方を見やると、呑気に手を振ってくれた。


 ジェーンは唇だけを動かし己の意思を伝えた。


 それに対して男は「来るな」と唇を動かした。


 自信満々に発する。


「主の命に従い、ギャロンよ。我諸共、刹那にリミュエールへ運べ」


 二馬の額に埋まる銀色の石が輝き出し、辺りは銀色の光に包まれた。


 リノとサロフがギャロンの腹に蹴りを入れ駆け出す。


 体が揺れてジェーンは必死にフードを掴んでいる。


「せめて肩に掴まって」


 癪だが言う事を聞き、左手から肩を持った。


 全てが塗り潰されるように銀色に染まり、体が軽く思えた。


 銀の世界をギャロンが駆け抜け、そして一気に世界は変わった。


 景色に色が戻り、目前に広がるそれはジェーンの記憶と重なった。


 人工的に開けた大空間。陽光に反射して敷き詰められた白の石畳が眩しい。


 城は見渡さなければ全て視界に入らず、巨大な建造物を中心に幾つもの尖塔が取り囲む。


 そそり立つブローズ城は大規模で優美さがある。


 ギャロンからジェーンは下りた。


 帰って来たんだ。次の瞬間には辛い記憶と苦い思いが蘇る。


 ここに居場所はない。胸が痛む。


「ギャロンはお前が使役する悪魔か」


「悪魔と精霊の見分けもつかないの。ギャロンは精霊よ。あんた、馬鹿?」


 勇ましくリノが地に足をつけ、サロフに視線で「下りろ」と促す。

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