表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
根源の魔術師  作者: 蓮華
12/70

二人目の追っ手

「ジョベンヌちゃん。宙吊りにしなさい」


 無情に引っ張り、地でしたたか体を打ち手を握る。


 宙へ上がっていき服が捲れた。腹部に浮き出る黒い紋様が露わになる。


 開いた目みたいな形を六つの六芒星が囲み、二重でびっしり表れる呪字は全て呪い。


 所々にある白い呪字は呪いを抑える、清らかで神聖な意味を持つ。


 ウサギはジェーンを持ち上げ微動だにせず、小さな体で立つ。あれは魔力を想像で具現化させたものだ。常軌を逸している。


 頭に血が上り始めた。


「羨ましいですわ。細くくびれたウェストが」


「……じろじろ見るな。変態」


「まあ、変態だなんて心外ですわ。ただ私はルウファス様の美しさに、目を奪われていますのよ。艶やかな黒い髪、玉虫色の瞳、均整がとれたお顔、潤いある肌。どれを見ても素敵で眩しく目眩がします」


 こめかみを押さえ、わざわざ膝を折り座り込む。


 一言も話す言葉が脳裏に浮かばない。声が左から右へ通過していく。その理由は単にリブルについていけないからだ。


「降参して下さい。これ以上、手荒な真似をしたくありません」


「俺は諦めが悪いんだ!」


 身を捻り投げつけた。宙吊りにされる寸前に手の中で握った、煉瓦の欠片はウサギの耳に当たる。それだけで十分だった。


 巻きつく手が緩まって、ジェーンは真っ逆様に落ちる。両手を突いて軽く跳ぶ。体を丸めたまましゃがみ込んだ状態で着地。


 着地した影響で手の平がじんと痛む。どうにか体が動いた事に安堵して、精神の集中を高める。


「リョマ・ツオ・キクセノ・レグン」


 宙に赤色の五芒星が形成され、幾つもの紅蓮の炎がウサギを襲う。


 火魔術ひまじゅつに部類され、紅蓮炎ぐれんえんと呼ばれる。


 あっという間に炎に包まれて、原形を失い魔力を焼き尽くした。


「よくも私が、お気に入りのジョベンヌちゃんを消し去りましたわね」


 怒りで頬を紅潮させ口が動く。直に呪文を言い終え、攻撃系の魔術が発動してしまう。


 ジェーンは紅蓮炎を成功させたが、魔力のコントロールを誤って予測より、消耗してしまった。


 気づけば自分は魔道の勉強に明け暮れて、様々な魔術を特訓して収得した。


 こんなに早く疲れは感じなかった。魔力が半分しかない事が影響していると思う。やはり感覚は大切なのだ。


 一度目は防ぎきれるが二度目はきつい。


 甘い香りがして危機感に従い息を止める。


 ふらついたリブルは呪文の途中で、ぱたりと倒れ眠ってしまった。


 少し吸ったジェーンは眠気に襲われる。まだ意識は保てられた。


「リブル、手柄は俺が頂いた」


 近づいて来る少年は水色の髪で声に覚えがある。


 挑戦的でどこか小馬鹿にした響き。鼻筋と顎がしゅっとして目つきは鋭い。


 ルア・ソナタだ。


「息を止める抵抗なんて長く続かない。苦しいだけだろ」


 甘い眠りは術者以外を甘ったるい香りで眠気を催させ、体と意識の活動を一時的に休止した状態にする。


「息を吸って楽になれ」


 その言葉は魅惑的で誘惑している。


 苦しい。ただ苦しい。


 ルアは満面に笑む。確実にジェーンが息を吸うと分かっているからだ。


 気づけば苦しさから逃れる為に息を吸い込んでいた。


 香りが頭をぼんやりとさせ、思考が停止する。頭がくらくらしてその場で膝を折り倒れた。

 少年は激しい睡魔に負けてしまった。



 誰かが必死で名前を呼ぶ。


「ジェーン、ジェーン」と。


 意識ははっきりしていたが、重い瞼を意思で開けたくても、薄目にすらならずもどかしい。少しでも気を抜けば、意識を手放してしまいそうで、甘い眠りの効力は強力だ。


 この声を知っている。とても心配げな声――。


 あの日、最後に聞いた声と同じだった。


「起きろ。ジェーン」


 かっと瞼が開き頬と手に当たる床は冷たい。


 起き上がろうとし、手に力が入らず無理だ。


 眠らせた相手をすぐに行動させない為、暫く動きを封じる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ