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根源の魔術師  作者: 蓮華
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抵抗

「私が魔力でつくった糸を容易に、切ってしまうだなんて……」


 素直な驚き、悔しさで少女が唇を噛み締める。


「レベイユ様の為、力ずくでいかせて頂きますわ」


 手から噴出させ魔力が丸くなった。可愛らしい声で呪文を口にする。


「トレガワレ・ヨマカタ・チリョク・ビネルニ・ギト・ハサウ」


 魔力が何かの形をとり始めた。


 耳は長い、黒い鼻、赤い目。片方の耳に花飾りがつき、小さなワンピースを着て、二本足で彼女の手に立つ。


 見た目は子供が遊ぶウサギのぬいぐるみだ。


「この子は私のお気に入り、ジョベンヌ・ミルキー・スカーリト・エディブル・クリサンスマム・メイプちゃんですわ」


「……」


「名前と見た目が可愛すぎる余り、お言葉を失っていますのね。ルウファス様」


 確実にリブルはネーミングセンスが欠けている。


 ジェーンはあれが可愛いとは思わない。疲れて否定する事が面倒だ。


「ジョベンヌちゃん。暇を持て余すルウファス様と遊んで差し上げなさい」


 ウサギがリブルの手から下り煉瓦の道が割れ、ひびが入って窪んでしまった。


「おい、俺を殺す気か」


「いいえ、貴方様がすぐにでも『ついて行く』と仰ればやめますわ」


 脈が速い。ジェーンは避ける。ウサギが飛び跳ねる度に足場が破壊されていく。


「どうして魔術を使いませんの。飽き飽きしてしまいます」


 襲い来る驚異から一時も目が離せず、気は張り詰める。


 魔術を使わない理由がばれれば弱みだ。口を引き結び、躱していた。


 あの攻撃に当たった場合、骨は砕け折れる。体内の臓器も無事では済まず危険だ。


 勢いよく跳んだウサギが目前に迫る。避ける間もなくとっさの判断で拳を突き出し、顔面にヒットした。


 感触は綿が入るぬいぐるみと同じようで吹っ飛ぶ。


 すぐに起き上がりしつこくジェーンを狙う。


 遂に被害が建物まで及び、ウサギの体当たりで壁が凹む。恐ろしい光景にぞっとする。


 平らだった道はでこぼこになり、足場が悪くなった。


 気をつけていたが足を窪みに引っかけ、体勢が崩れる。


 片手で受け身をとり、もう一方の手で五芒星を描く。指先が魔力で光る。


 五芒星は輝き、紋様にウサギが衝突して弾かれた。即席の防御だ。


 身を起こして赤い目を睨みつける。ぬいぐるみに翻弄され情けなく最悪だ。


「楽しんで頂けていますか」


「楽しんでいるのはお前だけだろ」


「まあ、初対面ですのに『お前』だなんて。大胆な。リブルとお呼び下さい」


 恥ずかしげに頬を赤らめてやけに「リブル」の部分を強調した。調子が狂う。


 少女と話す間は攻撃をやめ、明らかに赤い目はジェーンを捉える。


「ジョベンヌちゃんは貴方様と遊べて『嬉しい』と私に伝えていますわ」


「潰したいの間違いだろ」


「もっともっと遊んで差し上げて」


 魔力でつくったお気に入りのウサギを操り、苛める事を一番楽しむ。純真無垢な笑顔を浮かべて。


 ぴょんと跳ねて近づく。窪んでいる地が更に窪む。


 白い手を前へ出し何をするのか、見ていれば両手が伸びた。


「気持ち悪……」


 一直線に向かってくる。後方へ跳び退り次々と避けた。


 巻きつかれそうになり、左手を踏んで右手を蹴り上げた。


 後ろへ逃げる程に長くなる。魔術で攻撃を試みる隙がなく、行動を抑制された。


 現世界にいた為、魔術は使わなかった。それもそのはずあの世界では異端な力、不必要な力だ。


 自分は姿消しを使った瞬間から理解している。魔術を使う感覚が完全に掴めず、ちぐはぐなのだ。


 発動しても百パーセントの力を出し切れていない。


 左足にぴんと張った何かが当たる。均衡が崩れやらかしたと思っても時既に遅い。


 受け止められ首と腹に手が回る。


「足元にはお気をつけ下さい」


 建物と建物の間に透明な糸が張り、少女がつくったものだ。背後をとられた。


 木に蛇が巻きつくようにウサギの手が足を締めつける。

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