096話 5月23日#07
「……いや、ちょっと待ってください」俺はデーンさんに言った。「まだ街がこんな状況なのに、『カジノで遊ぶ』なんて……」
「いいのいいの!君たちは特別だから!」デーンさんはにこにこしている。「君たちに復興の手伝いをさせるわけにはいかない!」
「まあ、復興の手伝いはしなくてもいいかもしれないが、」レイすら、怪訝そうな顔をしていた。「少なくとも、私たちは今疲れている。まずは休ませてほしい」
「今なら無料で遊び放題……」
「そもそも俺たちがこの街に来たのは、カジノで遊ぶためじゃねえし」
「……君たち、欲がないねえ」デーンさんはため息をついた。「それじゃあ、何のためにこの街へ来たの?」
「船に乗るため」俺は頭を掻いた。「……まあ、少なくとも今日は乗れそうもないけど」
「……でしょ!?」デーンさんが食いついてきた。「だから、船がこの街に来るまで、カジノ……」
「まずは休むところをください」
「………………」
デーンさんは、にこにこ笑顔のまま固まっていた。
「絶対怪しいわよね、あの領主」
「まあ、そもそもこの街の治安が悪化した原因みたいだし」
俺たちは、結局カジノの『VIPルーム』とやらに通されることで折れた。その部屋は、派手というかゴテゴテした装飾品が多く、あまり居心地がいいとは言えなかった。
「……で、これからどうする?」テンは帽子を脱いで、椅子に脚を組んで座っていた。
「『どうする』っつっても、街がこの状態じゃ、宿には泊まれねえし……」俺は、テンの向かい側の椅子の背もたれにもたれかかった。「ここ使うしかないんじゃね?」
「……そうだな」レイはソファに寝転がった。「少し休んだら、読書でも……」
「街の人の手伝いに行くわよ!」リアは、レイの耳元で大きな声を出した。
「あたし……ちょっと、眠い……」
ソラは椅子に座って、体を丸めていた。
「レイ、ソファを貸してやれ」
「ほーい」
『うーん……』ピエール33世は、テーブルの上に着地した。『ワタクシにできることは、皆さんに手料理を振る舞ってあげることくらい……』
「食料って、どのくらいある?」と、俺は訊ねた。
『結構たくさんありますよ。野菜は『時間冷凍』、肉類は普通の冷凍保存してありますし、小麦粉もあるので、簡単なパスタとかも作れます』
「サトゥルヌスで買ったやつか」俺は自分の腹をさすった。「結構腹減ったし、まずは昼メシにするか」
『そうですね〜』ピエール33世は、その場でくるんと一周回った。『5人前ですか……ちょっと頑張ってみますね!』
すると、一瞬にして壁際のスペースに、簡易キッチンが現れた。
『『ピエールキッチン|(小)』の出番です!』
「……何でもアリなんだね」テンは不思議そうに、ピエールキッチン|(小)をじーっと見つめていた。




