095話 5月23日#06
すると、空から何か白いものが降ってきた――雨でも雪でもなく、柔らかく淡い光の粒だった。
しばらくすると、すぐ後ろで横になっていた『ゾンビ』が起き上がった。俺は剣を構えたが、様子がちょっと変だ。
「あ、あれ……?」その人はぼんやりとつぶやいた。「私は、何をして……?」
そして、次の瞬間、
「ぐ!イタタタ……!!」
自分の腹を押さえた。
「もしかして……」テンはつぶやいた。「正気に戻った……?」
それを機に、街のあちこちから歓声が上がったのが聞こえた。
呆然としている俺たちの元へ、ピエール33世がやって来た。
『何だかワタクシもよくわからないのですが、どうやら消化前の『意思』は、本人の元へ戻るみたいですね』
「そ、それはよかった……」
「お〜い!ピエール33世とその他〜!」
「……『その他』で括るな」
俺は、海の方からふよふよとやって来たレイに顔を向けた。
「私、あの変な黒いモンスターに勝ったぞ!」
「おう!横目でちゃんと見てた」
俺がそう言うと、レイとハイタッチした。
「ねえねえ、『じゅう』も!」
「『じゅう』じゃなくて『テン』だけど……」テンは苦笑いしたが、レイとハイタッチして、何となく嬉しそうだった。
「……あたしも、していい……?」
人間の姿に戻ったソラが、遠慮がちにつぶやいた。
「いいぞ〜!」
レイとソラがハイタッチしているところを見ながら、俺は自分の右腕を揉んだ。
「こんなに殴り続けたのは初めてだ……さすがに体のあちこちが痛え……」
「僕は『麻酔弾』のストックが切れちゃった。また買わないと!」テンはそう言ってウィンクした。
「あたしも腕が痛い〜!」リアは俺の足元にやって来て、俺の靴をぽかぽかと殴った。「おねが〜い♡あたしの腕もマッサージして〜♡」
「……踏み潰そうか?」
「あ!ひどい〜!!こんな可憐なあたしを踏んづけるなんて……きゃあ!」
俺はリアをつまむと、ひょいと俺の肩の上に乗っけてあげた。
「今回は……さすがに死者ゼロってわけにはいかなかったか……」
「うん、そうだね……」
――と言ってから、テンは素早くこちらを振り返った。
「『今回は』って、今までにもこういうことあったの!?」
「なーんか、あいつと関わっていると、行く街行く街で変な事件に巻き込まれるというか……」
俺はそう言って、後ろにいるレイを親指で指した。
「……トラブル体質?」
『単に、星霊使い同士が争っているだけだと思いますが』
「……おーい!君たちー!」
振り返ると、1人の初老の男性が、こちらに向かってやって来ていた。髪は半分くらい白髪になっていて、派手な赤いスーツを着ていた。
「あのドラゴンを仕留めてくれてありがとう!この街の代表として、礼を言わせてくれ!」
「あなたは……?」テンは首を傾げた。
「この街の領主。デーンと呼んでくれないか」
その後にデーンさんが言った言葉に、俺は耳を疑った。
「君たちを、わが『カジノ』へ案内させてほしい……この街を救ったんだ、いくらでも遊んでいいからね!」




