093話 5月23日#04
海岸へ出ると、浜辺の近くに人が集まっていた。みんな、音の正体を知るために、ここへやって来てしまったらしい。
「逃げろ!」俺は走りながら声を上げた。「ここは危ないぞ!」
その時、海の中からユラユラと揺れながら『ウグイロン』が姿を現した。やはり相当怒っているらしく、激しい咆哮を上げて、浜辺を見渡していた。
そして、息を深く吸った。
「伏せろ!!!」
『ウグイロン』のブレスが、横薙ぎに人々を襲った。レイやソラのゴーレムが盾となって一部を守ったが、他の人は、その場で塵となって消えていった。
「……これは時間勝負か」レイは少し考え込んだ。「私の『イグニスフィア』があんまり効いてなかったのは……『魔法盾』があるから?」
「たぶん、そう……」ソラの声が、いつもより大きく響いて聞こえた。「それ解除しないと、本体を攻撃できない……」
「とにかく、これ以上犠牲が出ないよう俺たちが人を逃がすから、2人で『ウグイロン』を止めてくれ」
俺が頼むと、レイもゴーレムも頷いた。
「「何とか頑張る」」
『ウグイロン』はこちらに顔を向けた。その『ウグイロン』の懐へ、レイとゴーレムが入り込んでいく。
その後、俺たちは必死に呼びかけて、全員を海岸から退散させた。『ゾンビ』は自分の意思では動いていないので、こちらにやって来たら眠らせ、『ゾンビ』を追いかけてきた人に、遠くまで運んでもらった。
「『ミラージブラスト』!」
「『ソーラーウィンド』!」
レイとソラが、同じような熱風を吹かせる攻撃をし、『ウグイロン』の動きが止まったが、ほとんど効いている様子はなかった。
「……殴り続ければ、体が砕け散るか?」
「頭を強く打ったら気絶するみたいだけど、あの体を壊すまではいかない……」
その時、『ウグイロン』がまたブレスを吐いた。レイは素早くかわしたが、ソラはまともに受けて、たたらを踏んだ――でも、何とか倒れずに済んだ。
「……じゃあ、『口』を狙うのはどうだろう?」レイはじっと『ウグイロン』を見つめた。「ブレスが吐けるってことは、そこだけシールドに穴があるんじゃないか?」
「そうかも」ソラは体勢を立て直した。「2人がかり……あたしがドラゴンの口を開けさせる……」
「じゃあ、私がその口に魔法を叩き込む」レイは大きく頷いた。「というわけで、よろしく!」
――しかしその瞬間、『ウグイロン』は空へと舞い上がった。体の周りを黒い強風がまとわりつき、何かをしようとしている。
「……大技叩き込むつもりか」
「気をつけて……」ソラも何かしようとしている。「あなたやあたしが『ゾンビ』になるわけには、いかない……」




