092話 5月23日#03
テンは後ろを警戒しながら、俺とソラは前で『ゾンビ』を殴りながら、さらに通りの奥へと走っていった――さすがにちょっと疲れた。
「来たぞ……いた!」
その大きな体躯は、大通りを塞いでいた。近くにいた人たちは逃げようとしていたが、『ウグイロン』は容赦なく飲み込んでいった。
俺たちが近寄ると、『ウグイロン』は咆哮を上げた後、こちらに向かって口を開けた。こっちにやってくるのかと思ったが、『ウグイロン』は大きく息を吸い始めた。
『危ない!』ピエール33世が悲鳴を上げた。『ブレスが来ます!!』
俺たちが地面にしゃがむ中、レイはぼんやりと突っ立っていた。俺は何をしようとしているか、すぐに悟った。
「レイさん、危ない!」
「動くな!」俺は、飛び出そうとしたテンの襟首を掴みながら、大きな声を出した。「人に当てんじゃねえぞ、レイ!」
レイの目の前に、あの大剣が現れた。『ウグイロン』のブレス――冷たく黒い風のブレスだった――はレイの剣にぶつかった。
直後、レイの剣の前に、巨大な火の球体が現れる。隣を見ると、テンが唖然とした顔をしていた。
「カウンター……」レイは剣を持ち替え、剣先を『ウグイロン』に向けた。「『イグニスフィア』!」
『イグニスフィア』は空中を吹っ飛んでいき、『ウグイロン』の頭に命中し、爆発した。『ウグイロン』は大きな叫び声を上げ、体を大きくのけぞらせた。
「え……?」テンは、驚きすぎてカチコチに固まっていた。「何?今の……?」
「レイ!」俺は再度レイに呼びかけた。「その怪物を、人のいないところまで誘導できるか?俺たちがフォローする!」
「まあ、頑張ってみる」
「あたしも……手伝う!」飼育員さん――ソラ――が、一歩前に出た。
レイは宙に浮かぶと|(「え!?レイさん飛べるの!?」)、勢いよく『ウグイロン』の元へと飛んでいった。『ウグイロン』は頭を振って体勢を整え、レイを飲み込もうと口を大きく開けた。
その頭に、レイは『クリムゾンブレス』を浴びせた。再び炎に焼かれ、『ウグイロン』は再び叫び声を上げた。
俺たちは、レイのいる方へ走っていった。ソラは俺たちから少し離れ、何か決心したような顔をした。
「……あの『人型ロボット』出すのか?」
「……うん」
突然、ソラの体を金色の光が包みこんだ。するとその縦に細長い光は、一気に俺たちの身長の10倍くらいにデカくなり、『ウグイロン』と同じくらいの大きさになった。
その光がなくなって現れたのは、『金属ゴーレム』――人型のロボットだった。少しの間ゴーレムはじっと『ウグイロン』を見つめ、それから突然走り出した。
そして、顔を上げたウグイロンの首に抱きつき、その太い腕で首を締め付けた。
「……やはり海が一番、人がいない」レイは周囲を見渡しながらつぶやいた。「そこへ連れて行こうか」
「うん……!」
レイは、『ウグイロン』の下半身に魔法をかけ、空中へと持ち上げた。その次に、ゴーレムがジャンプして『ウグイロン』を投げ飛ばすと、遠くから「バシャーーーン!!」と、勢いよく上がった飛沫の音が聞こえた。
「な、何あれ、すごすぎるんですけど!?」テンはもう、理解が追いついていないようだ。
「行くぞ、テン!」俺はテンの肩をバシンと叩いた。「海岸に人がいないか、確認しに行くんだ!」
「あ。あー……わかった」
テンはぼうっとしていたが、声をかけるとこくんと頷き、俺の後をついてきた。
ソラの人型ロボットは、『ロボット』が開発される以前から存在していて、その頃に『ゴーレム』と呼ばれていたそうです。結局、どっちともとれる特徴を持っているようですが。




