091話 5月23日#02
俺は、納刀したままの剣と自分自身の体を使って、『ゾンビ』たちの腹や首を狙って殴っていた。
『ゾンビ』といっても、本当に死んだ人ではない。そのせいか、普通の人の急所を突いただけで、簡単に倒れてしまった。
「……君、すごいね!」テンが話しかけてきた。「何だか、戦いのセンスを感じるよ!」
「お前もな!」俺はテンの方を横目で見た。
――テンの方も、俺が背中を任せられるくらい戦いのセンスがある。
ちなみに、リアは「怖い、怖い!!」と言いながら家の窓枠に立ち、何だかんだで『ゾンビ』たちを1人ずつ眠らせていた。
「……にしても、何人いるんだよ!」俺は、『ゾンビ』が無限に湧いてきているような感覚を覚えた。
「……あの少女が来る前、かなりの人が化け物にやられたから……」
フライパンのおっさんが、まだ近くにいた。
「あの子、すごいね」テンは口笛を吹く余裕を見せた。「一体何者なんだろう?」
「あんなデカい化け物に対抗できるなんて、俺には1つの可能性しか思いつかないな」
――星霊使い。
たぶんリアでさえ、本気を出せば一撃で『ウグイロン』を気絶させられるだけの力を持っている。
まして、レイぐらいの火力があったら……
しばらく経つと、俺たちのいるあたりにいる全ての『ゾンビ』が動かなくなった。その人たちの様子を、その場に居合わせた医者が診て回っていた。
「別の場所行こうか」と、テンがぼそっとつぶやいた。
俺は頷いて、リアを回収してその場から立ち去ろうとした。その時、
「「「きゃああああああ!!」」」
人の叫び声と、
「ガアアアアァァァ!!!」
大きな怪物の咆哮が聞こえた。
「とうとう戻ってきた!?」
「兄ちゃんたち、行きな」
フライパンのおっさんが、さっと叫び声が聞こえてきた方を指した。俺とテンは頷きあった後、一緒に走っていった。
走っている間にも、ところどころで『ゾンビ』と『人間』の戦いを発見した。助けられそうな人は助けながら、俺たちはくねくねと曲がった道を進んでいった。
突然、視界が開けた。大きな広場にやって来ていた。そこでも戦いは起きていて、地面には多くの人たちが倒れている。
すると、テンが俺の肩をつつき、ある方向を指さした。
――そこにいたのは、飼育員さんとレイだった。
飼育員さんは、軽やかな動きで『ゾンビ』と肉弾戦をしていた。的確に相手の急所を突き――この人も、かなり強い!
一方のレイは、ピエール33世を隣に従えて、呆然と立ち尽くしていた。
「あのままだと、レイさんが危ない!」テンは駆け出した。「ここは任せた!」
「あ、ああ……」
テンは、器用に戦いの中をくぐり抜けながらレイに走りより、懐から取り出した何かの箱を手渡した。レイは不思議そうな顔で箱を受け取り、中身を掴んで手近な『ゾンビ』に向かって投げた。
すると、白くて太い糸でできた大きな網が広がった。それが被さった『ゾンビ』は地面に倒れて動けなくなり、何とか脱出しようともがき始めた。
それからテンは、レイと何かを話し合い、こちらを向いて手招きした。
俺が走ってやって来た時、入れ替わりでテンは飼育員さんの手助けに入った。
「……レイ、大丈夫か?」
「どうだろうな……」レイはブツブツ言った。「あの人からこの『スピンドルスパイダーネット』をもらったが、私は投擲が苦手でな……」
「どうしてここへ来た?まさか……」
「あのドラゴンが現れて、この先に下りていった」レイは、さらに奥の方を指さした。「飛んでいこうと思ったが、ソラがカイトたちを回収してから行こうって……」
「『ソラ』?飼育員さんの名前?」
『ええ、そうです』ピエール33世は、オレンジ色の光を点滅させていた。『『ウグイロン』の相手は、レイさんとソラさんが担当して、2人の安全をカイトさんたちが確保したらどうかと提案されました』
「そうしよう!」俺はテンに呼びかけた。「移動するぞ、テン!」




