089話 5月22日#16
――あたりは真っ暗になり、風が不気味な音を立てている。
俺たちは、倒木のあるいい感じのスペースを見つけて、そこで野宿していた。
頭上を見上げると、月が輝いていた。もうすぐ満月なので、光はかなり明るい。
月の神は、月の光を浴びて白く輝いていた。
「……あー。こうして見ると、神々しい感じがしないでもない」と、テンがぼんやりつぶやいた。
「えっと、何だっけ。本来の力を取り戻すと、『蝶』の姿になれるんだとかなんとか」
「あー。それはきれいかもね……」
ひととおり、テンが納得するまで俺たちの事情は話した。あとはテンがどう思うのか、それが気がかりだったが……
「んー。まあ世の中、不思議なことだらけだもんね!僕の過去とか!」
「……どうしてこんなところにいるのか、まだ答え聞いてないんだけど」
「それはね……秘密!」
――どうやら納得してもらえたようだ。
「しかし、あの『ピース教団』?とかいうの、ずいぶん不気味な集団だね!?」
「うん」俺は片肘を膝につきながら言った。「俺たちもよくわからないんだが、あのピエールって男は『石』の使い方を知ってたみたいなんだ」
――月の神が言うには、『てんびん座の星霊使い』も、レイと同じく空を飛べるらしい。『石』は、対応する星霊魔法のうちの1つを使えるようにしてくれるもので、『てんびん座の石』は空を飛ぶことができる力を人に与える。
「えー?『星霊使い』の関係者なの?」
「それはわからない。ピース教団が関係しているかどうかもまだ……」
『あー。それは確実に関係していると思います』月の神が口を挟んだ。『あの子分たちの灰色のマント……あれに変な刺繍が付いていたでしょう?』
「あの……『Ω』みたいなの?」
『あれ、『てんびん座』のシンボルなんですよ……ほら、王宮前広場にあったやつです!覚えてないかもしれませんけど……』
「え?じゃあ、あいつら……」
『たぶん、何かしら『リブラ』と関わりがあるはずです!』
確かに、その可能性はある。『緑色の』刺繍というのも、『てんびん座の石』との何らかの関係性を想像させる。
「ふーん、『石』か……」テンは、俺が貸した緑色の『石』をしげしげと眺めた。「不思議だな……僕も何か魔法が使えるようになるのかな?」
「それは、お前の生まれの星座が何かによるかな」
「僕ねえ、みずがめ座なんだー」
「……じゃ、レイが『みずがめ座の石』を持ってる。レイが起きたら、試しに借りてみたらどうだ?」
「へえ!面白そう!」
――とりあえず、テンは本当に『星霊使い』や『石』のことを知らなかったようなので、もらってすぐに俺たちを裏切って、逃げてしまうこともないだろう。
『あ!お二人とも、朗報です!』
「「え?」」俺とテンは、同時に月の神を見た。
『チャージ完了!いつでも飛空艇として航行できます!』
「おお!!」
「……じゃあ僕、レイさんを起こしに行ってくるね!ここの片付けはよろしく!」
「あ、ああ……」
俺が立ち上がって火を消していると、テントのほうから「寝相悪いね!?」という大きな声が聞こえてきた。
文字化けするかもしれませんが、てんびん座のシンボルは『♎』です。




