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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
バッカス編

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087話 5月22日#14

 それを聞いたピエールは、「なぜそんな重い刑に……」と涙をこぼしながらつぶやいた。


 それは、俺もそう思う。『生贄』にするような罪ではないような……



 ――あ、でもその前に。



 「『ウグイロン』って何?」


 『あー……大変なヤツですね』月の神が紫色に光っている。『人の『意思』を食らって生きる、恐ろしく強いドラゴンです』


 「人の『意思』……?」テンも不思議そうな顔をしている。


 『人の心のはたらきの一部です。『意思』があるからこそ、人は自ら先へ進むことができます。その『意思』がなくなったら……』



 月の神は、プルプル震え、体の紫色が黒に近づいた。



 『人は、他の人の言いなりになります。『ゾンビ』みたいに』


 「え……じゃあ『生贄』っていうのは……?」


 『そのドラゴンを呼び出すための『ゾンビ』第1号ですね』



 俺たちがひそひそそんな話をしている間に、ピエールを生贄にする準備は着々と進められていた。



 「待ってください!お願いします!」ピエールはレイラに必死に訴えた。「私が悪かったです!だからどうか、それだけは……!!」


 「……始めなさい」



 ピエールを囲む10人の灰色マントたちが、一斉に呪文を唱え始めた。



 「『地底の覇者……地獄で死人を喰らう者……この世に地獄をもたらせ。彼を贄とし地上に現れよ……』」



 俺は無意識に、聞こえてきた呪文をつぶやいていた。



 「「え?」」テンとリアは、同時に俺を見つめた。「「あいつらが言ってる言葉がわかるの……?」」


 「あー。『石』預けたままだったな」レイはぼーっとした顔でつぶやいた。


 「『石』?」


 『説明は後で……そろそろ現れますよ!』



 何やら灰色マントたちが囲む円の中心に、かなり大きい魔法陣が現れた。色が黒い。


 レイがボソッとつぶやいた。



 「……燃やそうか?」


 「やめろ。教団員全員を敵に回したら厄介だ」


 「……ああああああああ!!!」



 ピエールの絶叫が聞こえてきた。


 それと同時に、『ウグイロン』の頭が地面から生えるように現れた。



 その形は、まるで人間の頭蓋骨のようだった。後頭部が丸く、鼻先も潰れていて、何より肉がない。


 しかも、桁外れに大きい。ピエールを一飲みにしてしまったほど……


 灰色マントたちは、蜘蛛の子を散らすように逃げた。残ったレイラが、『ウグイロン』に命令する。



 「あっちの方角に、救いようのない悪人がたくさん住む街がある」レイラは、ある方向を指さした。「満腹になるまで食べておけ。これからお前には、やらなければならない仕事が山のようにあるからな」



 『ウグイロン』は、大地を震わせるような大きな咆哮を上げた。そして前足を地面に引っ掛け、全身を地面から引きずり出した。


 『ウグイロン』の首から下は、ちゃんと『肉』があった……のだが、飢餓状態の生き物のように、あばら骨が浮き出るほどやせ細っていた。黒く大きな翼が前脚についていて、先端部分の骨が棘のように突き出ていた。尾は細くて長い。体と同じだけの長さがあった。


 『ウグイロン』はいきなり羽ばたき、つむじ風を巻き起こしながら飛び去っていった。そして後には……ピエールがいた。さっきまでと同じ姿勢でいるが、顔から生気が抜けていた。



 「同じ場所へ行ってこい」レイラは残酷な命令をした。「お前ら『ゾンビ』で、互いに殺し合いな」



 それだけ言うと、レイラは着けていたリストバンドを外した。何だろう?と見ていると、レイラが「『飛べ!大空へ舞え!』」と呪文を唱えた。


 リストバンドは変形して、あっという間に翼のついた1人用の乗り物になった。凧みたいなものに見える。俺は、その乗り物の名前を知らなかった。


 レイラはそれに乗ると、空へ飛び上がり、そのままどこかへ飛び去ってしまった。

『ウグイロン』が人を飲み込んでも、その人の『意思』以外は、肉体含めてその場に残るみたいです。

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