083話 5月22日#10
何だか妙な男だが、もし本当に助けに来てくれたんだったら、あまり警戒してるとかわいそうかもな。
「……仕切り直して、もう一度名前を訊いてもいいか?」
「ふ!」なぜか鼻で笑ってる。「よくぞ訊いてくれた!もう一度名乗ることにしよう!僕の名前は……ヴァルキリー・ヴェリタス!!」
――ずいぶん仰々しい名前だな。
「……だから『テン』って呼んでね!」
「え?何で!?」
しばらく男を見つめていると、男は両手ともVの字を作って、何かを待っていた。
「…………あ」レイが、何か思いついたらしい。「イニシャルが『V. V. 』だから、V|(5)+V|(5)=Ten|(10)」
「……正解!」
「わかりづれえあだ名!!」
こいつ、格好以外も変な奴だな。
「……代わりに、君たちの名前を訊いてもいいかな?」テンは、そう言ってウィンクした。
「俺は、カイト」素直に自己紹介しておいた。
「私はレイ」
『ワタクシは月の神!』
「……え?『月の神』?」
「あんまり細かいこと考えない方がいいわよ♪」リアがぴょこんと俺の懐から顔を覗かせた。「あたしはリア、よろしくね♡」
「……ちっちゃ!」
テンは、先ほどのように大きさに驚いているが、うろたえるほどではなかった。
「君たち……変な取り合わせだね」
「……自覚はしている」俺は頭を掻いた。「とりあえず、俺たちを助けに来たんだよな?」
「うん。こんな湿ってる日に狼煙っぽいものが上がってるから、魔術師が困っているのかと」
「まあ、その予想は当たってるわね」リアは、器用に俺の肩の上にのぼった。「ちなみに、このメンバーの中で魔法が使えないのは、カイトだけよ♪」
「嫌味に聞こえるけど、言い返せない……」
「……確かに、見るからに『脳筋バカ』だね」
「お前まで俺をそう呼ぶな!」
「とにかく!」テンはくるんとその場で回った。「僕が来たからには、大丈夫!君たちの困りごとは、このテンが解決してあげまーす!」
「じゃあ、『困りごと』を遠慮なく言うぞ」と、レイは言った。「道に迷った。ここからバッカスまでの最短ルートを教えてくれ。以上だ」
「……バッカス?」テンは驚いた顔をした。「何で行きたいの?」
「それは、ちょっと言えないんだが……」
「僕としては、君みたいなマドモアゼルが行くところとして、バッカスはオススメできないな」
「何で?」
「あそこ、治安が悪いんだよ。普通にスリとか強盗とか誘拐とか起こるから!」
「フツーに敵を燃やせばいいのでは?」
「あのなあ……」俺はテンの方へ一歩近づいた。「とりあえず、バッカスまで行く方法を教えてくれると嬉しい。俺たちはそこで長居をするつもりはないから」
俺は右手を差し出した。だが、テンはむくれた顔をした。
「僕はマドモアゼルと握手したいなー……」
「……殴るぞ、お前」
テン:僕の趣味の話なんですが、『手品』は、仕事で度々強制参加させられるオジサマたちの宴会の余興のために覚えまして……『手芸』は、義理の母から教わりました。大切な一張羅を長持ちさせるためです。僕としては、『手芸』の方が大好きです。




