008話 5月11日#01
翌朝。
『あのー、もしもーし!起きてくださーい!』
「うーん……」
誰かの声を聞いて、俺はうっすらと目を開けた。
――そして、何やらデカい、イモムシみたいなヤツの頭のドアップを確認した。
「うわああ!」俺はびっくりして飛び起きた。
『あ!驚かせちゃってごめんなさーい!』
――イモムシはしゃべっていた。
俺は昨日の出来事を思い出し、イモムシの正体(仮)を思い出した。
「えっと、あのー……『月の神様』だって聞いたんですけど……?」
『ハーイ!ワタクシ、『月の神』でーす!』
――やっぱりそう、なのか……?
『『『太陽の神』との戦いに負けて、地球に落っこちちゃいました!』
「あのー、悪いんだけど……あんまり、その、『神様』っぽく見えないんですけど……?」
俺は、「本当に神様だったら失礼にならないか……?」と思いながら訊ねた。
『あー、やっぱそうですよねー!よく言われますー!』
表情は全くわからないが、口調は明るいし、体が黄色く光った。
『でも、本当に神様です。信じて大丈夫です!……あと、もっとフランクに話していいですよ!ただの神なんで!』
「い、いや。神様が丁寧に話しているのに、俺がフランクだったら……」
『これはワタクシのデフォルトです!気にしないでください!』
――なんか、いろいろツッコミどころがあるんだけど……。
『……あ、そういえばお名前伺ってませんでしたね』
「俺はカイト。そこで寝てるのはレイ……」
――と言ってベッドを指さしたら、とんでもないことになっていることに気づいた。
「寝相悪っ!」
布団は床に落ちてるし、枕はなぜか足元にあるし、本人も大の字になって寝てるし――てか、俺や月の神が騒いでるのに、何でまだ起きないんだよ……。
『……起こしましょうか?』
「……できるのか?」
『ええ!これでもワタクシ、月の神ですから!』
そう言うと、月の神はのそのそベッドの上に上がり、脚でレイの体を揺すり始めた。
『おーい、朝ですよー!起きてくださーい!』
「それ……『月の神』じゃなくてもできるよな……?」
俺は呆れてため息をついた。
『早くー!朝ごはん食べないんですかー?』
「ムニャムニャ。気持ちいい……一生ここにいたい……」
「おい。やめてくれ」
『ですよねー!ワタクシも賛成です!』
「だから、やめてくれ」
レイは、この後1時間くらい眠り続けた。




