077話 5月22日#04〜解説:収納、武器、住民票〜
そういえばピエール号のリビングで、こんな話もしていた。
「『おひつじ座の星霊の家』に10万冊の本!?そんな大量の本、読み切れるの!?」リアは愕然として言った。
「1年で1000冊読んで、100歳まで生きれば……」
「それ、ほとんど一生読書しかできないじゃん!!」
「1日あたり3冊くらいだから、そこまででも……」
「……まあ、何でもいいけどさ、」俺はレイとリアの方を向いた。「俺には、そもそも何でそんな大量の本を持ち歩けて、それも『いつでもどこでも』出し入れできるのかが謎なんだが」
「確かに、一般的な『収納魔法』とは違うかもね」リアは頷いた。「あれは、単に空間を魔法で大きくしているだけだから」
「私たちは……『家』に置いてる」
「『家』?」
「ああ。『星霊』は異世界に住んでるって言っただろ。その星霊の『家』の一室に、私たちは収納している」
「それで、いつでもどこでも出し入れができるのか?」
「ああ。ただし、『星霊界』に行ける人しか使えない」
「……つまり、あたしたち『星霊使い』の特権ってわけ♪」
リアは得意そうにニッコニコしていた……何かムカつく。
「まあ、そういうことにして……」俺は努めてリアの顔を見ないようにした。「じゃあ、『星霊使い』の特殊な武器も、その『星霊の家』にあるのか?」
「んー、そう言っていいのかなあ?」レイは首を傾げた。「あれは……道具というより、『星霊の分身』って感じのモノなんだよな」
「……よくわかんないんだけど」
「んーとね、」リアも首を傾げている。「星霊の家には、星霊が常に映っている『鏡』みたいなものがあって、星霊使いはその中にある『星霊の複製』を取り出せるし、そのまま武器として使えるようになるのよ」
「それができるようになるのが、星霊使いとしての第一歩なんだよな」
――何か、想像力を試されている気がする。
「うーん、『星霊界』か……行ってみたいなあ……」
「……あんたじゃムリよ」リアが嬉しそうに嫌味を言ってくる。
「言われなくてもわかってるよ」
俺は、リアに背中を向けた。
「まあ、気持ちはわかる」と、レイは言った。「観光ツアー組んだら売れそうなくらいきれいな場所だしな」
「そうね。きれいな女神様もいるし♡」
「女神……?」
「すごいわよ。大きくて包容力があって……巨大なの!」
「確かに、デカい。偉大で、巨大だ」
「……大きいことはわかった」
――そういえば、月の神の本来の姿もかなりの大きさがあるようだから、神様ってそんなものなのかもしれない。
「……でも、あたしたち『星霊使い』にとって、この世界も十分不思議だわ」
「どこが?」
「『住民票』とか……」
「うーん、確かに」レイは腕を組んだ。「あれがないと病院でお金取られるとか、考えたこともなかったからな」
「あー。保険に入るには、この国の国民だって証明する必要があるもんな」俺は苦笑いした。「もしや、出会った時に金がなかったのは……」
「……怪我したから病院へ行ったら、有り金ごっそり取られた……」
「あたしもかなり苦労したわ」リアは肩を落とした。「でも、あたしの場合はじいやとばあやがいたから何とかなったけど、アリエスは身寄りがないんでしょ?」
「……というか、自分もいなかった」
「……どゆこと?」
「私が故郷に帰った時、なぜか廃村になってて誰もいなかったって言っただろ?」
「そうだな」
「村の一角に墓がたくさんあったんだが……その中に、なぜか私の墓が……」
「……え?」
俺とリアは固まった。
「まあ、今回の『難民登録』のおかげで住民票も保険証もゲットしたから、これからはそういう類の心配は全部なくなった……たぶん」
「……結果がよければオーケーってことでいいか」
「そうね」
俺とリアは、肩をすくめて苦笑いした。
『住民票』は、イェリナ国内に住んでいれば(そして犯罪者でなければ)発行してもらえます。『住民票』のある人は、ほぼ全員が公的な保険に加入できます。




