074話 5月22日#01
翌日。
いつもの施設の前で、レイはジャクリンさんやアルさんと握手を交わしていた。
「審査通ってよかったね」ジャクリンさんはレイを抱きしめた。「これからも、何か困ったことがあればいつでも相談に乗るからね」
「カイトさん、レイさんのこと、よろしくお願いしますね」
「は、はい」
俺も2人と握手を交わし、2人は施設の中へと戻っていった。
『じゃ、レイさんも無事『イェリナ国民』になれましたし、次の街に向かって出発しましょう!!』
「「「おーーー!!!」」」
みんなの掛け声を聞いた後、ピエールネックレスはいつものロボットの姿に変身した。
「何かこういうのいいわね♪ちょっぴりワクワクしちゃう♡」
「何かなー……」釈然としないのは、俺だけか。「初めて会った時はレイが変な奴だと思ったのに、他の『星霊使い』に会ってみると、そのレイが普通に見えてくるというか、何というか……」
「行こ、行こ!ボーケン、ボーケン!」
「……やっぱ、今の訂正するわ……」
何にせよ、俺たちはユピテルでの長い滞在を終わらせるべく、街の外れにある『飛空艇発着場』へと向かった。
道すがら、目的地の最終確認を行った。
『今回の最終目的地は、ミライさんが言ってた、イェリナ北端にある『ヴィクトリア』という街です』と、ピエール33世は言った。『そこへは、ワタクシに乗って『バッカス』という街へ移動し、そこから海の船に乗って行きます』
「問題は、」俺はため息をついた。「ピエール号が、本物の飛空艇ではないこと」
――つまり、ピエール号に搭載されている計測機器類は、全部ただの飾りである。
「今までは列車の線路に沿って行くことができたが、これからは方位磁針と地図に頼って移動するしかない」
「え、何それ?」リアが眉間にしわを寄せた。「月の『神』なのに、方向がわからないの?」
『……実は、月の『神』だからこそなんです』ピエール33世が黄色く光りながら言った。『ワタクシ、ずっと月にいましたので、地球での方位の測り方を知らないんです!』
「……そこは、自慢して言うところじゃないでしょ」
「仕方ないから、俺たちが方位や距離を測ることになるんだが……」
このメンバーには、その手の専門家はいない。
「ちょ!どうするの!」
「ユピテルの東側に街道が走っているだろ?」俺は地図を示した。「途中の『イカリオス』という街までは、その街道に沿って行けばいい」
「……で、そこからどうするの?」
『そこからは乾燥地帯なんですけど……まあ、邪魔するものも目印になるものも何もないので、真北へ適当に進みます!』
「……それで大丈夫なの?」
「てか、それ以外に方法がない」俺は肩をすくめた。
『「………………」』
――2人は、沈黙した。
「ハラ、減った。ゴハン、食ベタイ」
レイはまだ片言で、マイペースにしゃべっていた。




