072話 5月21日#02
「明日、書類、モラエル!イェリナ人、ナレル!」
旧市街前の公園でレイに会うと、レイは嬉しそうに報告した。
「お!それは良かったな!」俺はレイの肩を叩いた。
「今日は面白い催し物に、カイトさんが参加すると聞きましたが?」
今日の付き添いは、ジャクリンさんではなく、俺より10センチくらい背の高い男性だった。アルさんというらしい。
レイは施設の中でアルさんと会っていたらしく、特に緊張感もなく普通に話していた。
「ギルド対抗の腕相撲大会ですね」俺は朗らかに言った。「お世話になった店の人に恩返ししたくて」
「……ウソつき」上着の内側から、何かが聞こえた。
「確かに、カイトさん、腕強そうですもんね」アルさんはそう言いながらも、少し心配そうに俺の顔を見た。「でも、この街の職人さんたちの中には『ボディビルディング』をしているくらいのマッチョさんいますよ?」
「だ、大丈夫です!」ホントか、俺?「俺の筋肉は、実践を積んでできたものなので!」
筋肉は、あればいいわけではない。ちゃんと使いこなせるかが、重要なんだ!|(と、自分に言い聞かせた)
「と、いうわけで!第1回戦、開始!!!」
1時間後、集会場にて。ライトニングさん|(司会)の声に合わせて、2人のおっさんが試合を始めた。
確かに……集まった職人のおっさんたちは、思ったより筋肉隆々だった。
「「「いけー、いけー!!!」」」
――そして、隣で女性部門も開催されていた。
レイは参加しないと言ったので、俺たちと一緒に男性部門を観戦していた。
試合はトーナメント戦。つまり、一度でも負けたら優勝することはできない。
――そういう緊張感に、俺は慣れている。もっと危険な闘技場での試合でも、トーナメント戦に出場したことあるからな。
「おーっと、勝負がついたぞ!1回戦は陶芸家のサティヴァさんの勝利!!」
「「「おー!!!」」」
歓声が上がった。
「じゃあ、早速次の2回戦に移りましょう!」切り替え早っ。「2回戦は、染色屋のファタさんと、飛び入り参加のカイト君の勝負だ!」
「ガンバレー」安定のやる気のない声でレイに応援されながら、俺はファタさんと対峙した。
「よろしくお願いします」
「……お願いします」何か、腑抜けるほど優しそうなしゃべり方をする人だ。
「では!」
俺は台の上に右肘をついた。
「よーい、どん!!」
――勝負は、一瞬でついた。
みんなが声を失う中、俺はファタさんの右手の甲を台につけていた。
「え……」ファタさんも、驚いて声が出ない。
「しょ、勝負あったーー!」ライトニングさんが、ようやく声を上げた。「カイト君の勝ちだ!!」
「「「うおおおーーーー!!!」」」
「き、君強いね……」アルさんは、完全にドン引きしている。
「こういうのは、瞬発力が大事ですから」
俺は何食わぬ顔でそう言い放ち、レイに話しかけた。
「……リアはどこ?」
さっき気付いたが、俺の上着の内側にはいなかった。
「……私のマント……フード……」
――どうやら、レイのマントのフードの中に潜り込んでいるようだ。
リアから何も反応がないのが少し不安になったが、とりあえず次の試合へ目を移した。




