071話 5月20日#07−5月21日#01
その後の俺は、魂が抜けたかのようにぼーっとしていた。
「誕生日が、あんまり嬉しくないのかな……?」ジャクリンさんは、祝っても反応しない俺を見て、首を傾げていた。
「誕生日……誕プレ、欲しい……?」
レイがそう言うと、ジャクリンさんはニコッと笑った。
「そうだね。あともう少し時間があるし、このあたりで誕プレ買ってあげよう!」
「あー、そんなに気を使わなくて……」俺はもごもごとつぶやいた。
「もう行っちゃってるわよ♪」
リアは俺の懐に勝手に入って、元気よくサムズアップした。
「よりによって、誕生日に、あんなことを、なぜ……」
「ほらほら♪置いていかれちゃうわよ♪」
げっそりとしたまま、俺はレイとジャクリンさんの後を追った。
結局俺は、レイから『ハムサ』というお守り|(人間の『手』みたいな形をしている)をもらい、少し元気になった後、レイとジャクリンさんと別れ、『ありさん』へ行って仕事を探した。
今回は巡回警備ということで、熟年の警官2人と共に、街の中を歩き回った。
そこで聞いた、驚愕の事実。
「え!?『忍者』が逃走した……!?」
気づくと、監禁していた部屋からいなくなっていたらしい。
「もしかしたら、バリアを通り抜ける術を持つ、新手の魔術師なのかもしれんな」
「それは考えすぎでは?」
「だが、魔法は日々進歩している。全ての可能性を頭に入れて行動しなければ……」
俺はその話を聞いて、レイたち『星霊使い』を頭に思い描いていた。
「『いて座の星霊使い』ではなかったけど、別の星座の星霊使いって疑ったほうがいいのかもしれないな……」
俺は、警官たちに聞こえないような小さな声でつぶやいた。
さて、翌日。
『ギルド対抗力自慢大会|(種目:腕相撲)』の当日の朝を迎えた。
夜ゆっくり休んだからか、俺は昨日のショックから立ち直っていた。
「うしっ!今日も張り切っていくぞ!」
「あんた、結構心もタフね」なぜか俺の枕元で、リアが寝そべっていた。
「それが一番のウリですから!」
俺は窓を開けて――少し驚いた。
「あ、雨……?」
しとしとと雨が降っていた。
「大丈夫よ。大会は集会場でやるから……」
「いや、」俺はくすっと笑った。「ケレスからの旅の中で、初めて雨が降ったな、と思っただけ」
「そういえば、この頃毎日晴れてたわよね」
リアも、窓枠の上にやって来た。
「暇だし、大会を観戦して、あんたがどれだけの力量を持つか見極めてあげるわ♪」
「そーか、ありがとなー」
俺は適当に返事をしながら、肩の関節を回して調子を確かめた。




