067話 5月20日#03
俺はレイに念を送りながら人目につかないベンチを見つけ、そこにジャクリンさんを座らせた。
「あの……ホントに大丈夫ですか?」
「はい。あの……ごめんなさい。私……急にどうしちゃったんだろう……?」
「え、えーっと、」どうしよう。「もし、具合が悪いなら、誰か助けを呼びますよ?」
「い、いいえ!そんな重くはないので大丈夫です。ただ……」
「ただ?」
「あなたと二人きりになりたくて……」
――え、えええええ…………
マジでこんなに効くんだ――てか、マジでリアはどこなんだ!?
妙にこっちもドキドキしてくるし。
「最初に出会ったときから、素敵な方だと思ってたんですよ」よくよく考えたら、ジャクリンさんらしいフランクさがない。「すごく素直で真っ直ぐな人だし、そのせいか瞳もすごくきれいで……」
――これ、どうしたらいいの?俺、こういうの苦手なんだけど。
頭を真っ白にさせている間にも、ジャクリンさんは俺のことを褒め続ける。
「……『闘技士』やってるってことは、剣もお強いんでしょ?そんな完璧な人、私は今まで一度も会ったことないわ……」
その時、ふと思い出した。
――そういや、キスすれば眠ってくれるんだっけ。
このまま褒められ続けるのは耐えられない。キスでも何でもして早く何とか止めて、ジャクリンさんを黙らせなければ。
俺はかがんでジャクリンさんに顔を寄せ、小さな声で囁いた。ジャクリンさんが小声でも話せるようにするために。
「ジャクリンさん。俺のこと、褒めてくれるのは嬉しいんですけど、俺はそこまですごい人じゃないです。魔法に弱いし……」
「謙遜しなくていいんですよ。私、一生褒めちぎりますから!」
「え……」
思ったより、声のトーンが高い。
「私、決めたんです!あなたを一生支え続けます!」
――ジャクリンさん、違う。俺が顔を寄せたのは……
「私、あなたのことが、大す……!」
俺は突然、ジャクリンさんを抱き寄せた。そして、こめかみに優しく唇を押し当てた。
すると、ジャクリンさんは俺の膝の上に落ち、動かなくなった。
「……チッ。惜しい!」何か上の方から声が聞こえてくる。「もう少しで、健気で純粋な剣士のファーストキスを……」
「いた!」
俺は頭上に張り出している細い枝の根本に、リアの姿を見つけた。リアは、めちゃくちゃ意地悪そうな顔をしている。
「お前、ジャクリンさんに何てことをさせるんだ!」
「その子、思ってたより積極的だったわね♡」リアは、手のひらを返したように天使の笑顔を見せた。「あともう少しだったのに♡」
「お前の魔法、」俺はギロッと睨みつけた。「俺からキスしないと眠らねえんだろ?」
「あら。よくわかったわね♪」
――やっぱりそうか!
「危ねえ。あともう少しで……」
「それより、カイト君」リアは小馬鹿にしたような口調で俺の名前を呼んだ。「さっさとアリエス連れて、じいやばあやの店へ行ってきて。あたしがその子のこと見守ってるから」
「……後で踏み潰してやる」
「やれるものなら、やってみなさい?」
俺はジャクリンさんを「ごめんなさい」と謝りながらベンチに寝かせ、レイの元へ行こうと立ち上がった。
――レイは、俺たちが座ったベンチに一番近いベンチで、どこかで買ったクレープを美味そうに食っていた。
「………………」
すべて終わったら、脅してでもリアに矢文の内容を白状させよう。
思えば、カイトの詳しい容姿について、どこにも書いてませんね。
実は……私もよくわかりません!なので、テキトーに頭の中で創造しちゃってください!!




