066話 5月20日#02
あたりをそれとなく警戒しながら歩いていたが、今のところヘンなことが起こる気配はない。
そのまま何も起こらないことを祈りつつ|(まずそんなことは絶対あり得ないとも思ったが)、やがて旧市街の入口までやって来た。
そこは小さな公園になっており、木陰にいくつかベンチが置いてあった。
『……カイトさん、今日は何もしゃべりませんね』
「疲れてる……ビョーキ?」
「いや……気にしないでくれ……」
俺は小さな声で、2人に話しかけた。
「……矢文、見たよな?」
『矢文……えーっと……』
「んー、何のハナシ?」
「見たな……じゃあ、今それ持ってるか?」
『えーっと……』
「シラナイヨー」
「持ってねえのかよ!」
俺は不安に思った――もしリアが、自分の作戦の中で俺がすることまで詳しく書いていたら、恥ずかしいなんてもんじゃない。
――これは、ジャクリンさんをリアの魔の手から守らなければならない。
俺は後ろにいるジャクリンさんに声をかけた。
「あの。まずお昼食べませんか?俺、朝食食べそこねて、腹がペコペコで……」
その時、ジャクリンさんの様子がおかしいことに気がついた。なぜかその場で固まっていて、こちらを全く見ようともしない。
「ど、どうしました……?」
俺が「まさか……!」と思って近づくと、ジャクリンさんは顔を上げた。
――え……どういうわけか伏し目がちに、こちらをちらっと1回だけ見たんですけど……?
「あ、あのー……」
「す、すみません……何だか急に、胸がドキドキしてきて……」
「だ、大丈夫、です、か……?」
近づいたら、ジャクリンさんは俺がいる前の方へ倒れてきた。
仕方なく腕で受け止めると、ジャクリンさんは上目遣いでこう言った。
「カイトさん……本当に優しい……ですね。こんなに優しくて強そうな人と会ったのは、初めて……」
――もしや、マジで魔法がかかった?
俺は周囲を見渡したが、やはりリアの姿は見えない。
「あの、カイトさん……私……」
「あ!あそこにあるベンチで休みましょう!病気かもしれないし!――ちょっと先行っててくれ、後で俺も行くから!」
後半はレイに向かって言った。でも、レイがどうしたのかまでは、確認しなかった。
――たぶんレイなら、俺の行動を深くは追求しない。てか、追求しないでほしい。




