065話 5月20日#01
――ガランガランガラン!
「……は!」
俺は大きな音を聞いて、目を覚ました。
しばらく考えてから、今聞こえてきたのは、どこかの鐘楼の鐘の音だと気づいた。
「あんなもん、昨日まで意識してなかったな」
――そんなことより、俺の前には大きな問題が立ちはだかっている。
「やられた……リアはどこだ?」
少なくとも、今の俺の視界内にリアはいないようだ。
「いや、これはまさか……!?」
――例の作戦を決行するしかない、ということだろうか。
「いや、待って。考えれば何かアイディアが思い浮かぶはずだ」俺は両手で頭を叩いた。「あんなの、作戦じゃない。ただの俺への嫌がらせ……」
ふと、壁に小さな矢が刺さっていることに気がついた。よく見ると、小さな紙がくっついている。
「何これ?」
紙には、虫眼鏡がほしいくらい小さな字で、こう書いてあった。
『親愛なる恋の王子様へ――
作戦の概要をアリエスに伝えたわ♪
ね、あたしの矢文ってすごいでしょ?目標の人のところまで、木も家もみんな避けていくんだから♪
……あ、心配しないで!『あなたがどうにかしてジャクリンさんをアリエスから引き離す』って書いたから、『あなたがジャクリンさんの恋人になる』ことは、アリエスたちに伝えてないわ。
でもきっと、上手くいくわ♪だってあなたは、すごく素敵な王子様だもの♡
アリエスたちも協力してくれるだろうし、あたしも物陰から全力で応援する!
だから頑張って王女様のハートを射止めてね♡
追伸:これ書いてて気づいたけど、あなたの名前訊いてなかったわ!リア失敗!後で訊くから、それまで待ってて!
――世界一かわいい恋のキューピッド・リアより』
「………………」
これは、もう……
「あいつ、俺に喧嘩売ってんのか……てか、退路を絶たれた!?」
――この流れは、確実にヤバい。
「仮病を使って宿で休むか……いや、あの店にレイたちを連れて行かなかったら、老夫婦が何をするかわかんねえし……星霊使いが一緒にいたがらないって、どんな夫婦なんだ……」
もはや頭の悪い俺では、自分が何を考えた方がいいのかすらわからない。
「どうしよう……?」
――と、とりあえず、いつも通りレイたちのいる施設の前まで行ってみるか……リアが見つかればいいんだが。
約束の時間の前に施設まで来ることはできたが、周辺を捜索してもリアは見つからなかった。
「だよなー……あいつ、何であんなにちっこいんだろ……」
祖父母も確かに普通の人に比べると小さいが、あのリアの小ささは、本当に人間なのか疑いたくなるくらいだ。
「いや。あれでも星霊使いだ。もしかしたら、魔法であんなにちい……」
「ぶつぶつ言って、どうしたの?何か悩み事でもあるの?」
突然話しかけられて、思わずびくっとした。よりによって話しかけてきたのは、ジャクリンさんだった。
「あ、いえ。大丈夫っす……」
「キョウハ……ドコ?」
レイは、安定の片言で、俺に話しかけてきた。
「あー、どうしようかー」声がひっくり返りそうだ。「レイはどこか行きたいところない?」
「……キュウシガイ……」
――これは、リアの矢文を読んでいる。
「もっと、イッパイ、見タイ……」
「じゃあ、旧市街にいこうか!」
ジャクリンさんだけが、何も知らない。
俺はどこかにリアがいないかと探しつつ、そわそわしながら歩くことになってしまった。




