062話 5月19日#04
「うーん……」
何か、この街に来てから考えごとばかりしている気がする。
「『『サギタリウスの石』を探す』という点ではビンゴだったみたいだが、どうやったらジャクリンさんを引き離して、レイたちだけあの店に連れて行くか……」
――ヤバい。俺、そういうの考えるの苦手なんだ。
「せめて『3日後』くらいにすればよかった。レイの『申請』が通った後だったら……」
俺がとぼとぼと歩いていると、ふと「お兄さん、お兄さん」と呼ぶ声が、どこかから聞こえてきた。
「……?」
俺はきょろきょろとあたりを見渡した。
「……こっちよ、こっち」
ふと見上げると、目の前にある家を囲む柵の上に、あの弓矢を持った小人がいた。彼女は矢をつがえずに、弓だけで矢を撃つ仕草をしていた。
「『サギタリウス』……」
「ちょ!あんた、その名前で呼ばないで!」小人は慌てだした。「あたしのことは『リア』って呼んで!」
「あ、すまん……」俺は素直に謝った。
「それより……あたし聞いちゃった♪」
小人は、機嫌を直し、その場でくるっと回った。
「何を?」
「あなたとじいやばあやの会話よ、会話♪」
「……どこから?」
「そんなことはどうでもいいのよ」リアはぶんぶん両手を振った。「でもあなた、困ってるみたいじゃない。だから、あたしが手助けしてあげるわ!」
「ホントに?」
「代わりに、」リアは上目遣いで話し始めた。「じいやばあやを説得して、あそこにあたしが帰らなくてもいいようにしてほしいの」
「は?」
「これで貸し借りなし!だから、ね?お・ね・が・い♡」
「……結構重要な問題なんだから、茶化さないでくれるか?」
「もー!少しは絆されたフリしてよー!」リアはまた機嫌を悪くし、頬を膨らませた。
「……と、言われてもだな」
俺は頭を掻いた。
「具体的にどうするか、何か案があるのか?」
「そうね……」リアは考え始めた。「まず、あなたの『友だち』のことと、今どういう状況なのか、詳しく説明してくれる?」
「……わかった」
――しばらくして。
俺は、リアを連れて王宮前広場までやって来た。リアは俺の肩に乗りたがっていたが、俺が断固拒否して、今は上着の中に隠れている。
「なるほど、あたしもわかるわぁ〜」俺の説明を聞いて、リアはこくこく頷いた。「あたしも魔力バカみたいに高いし、荷物も多いから、検問に引っかかるわね〜!」
「検問受けたことあるのか?」
「ないわ♪」リアはニヤリと笑い、サムズアップした。「あたし、兵士のお兄さんお姉さんに気づかれずに、あのゲート通れるから!」
「……だと思った」
「……でもたぶん、あなたたちのとった行動は、一番いい方法だったと思うわ」
「そうか?」
「だってこの国、あたしたち星霊使いが住みづらいところだもん」リアは俺の手に乗ってすぐ、後ろの植え込みの中に隠れた。「せっかくこの国に、強〜い星霊使いが12人もいるのに、全っ然あたしたちのこと優遇してないでしょ?」
「……確かに」
あんなに強い奴らが、力を持て余して互いに戦ったり街を破壊したりしている現状は、あまりいいとは思えない。
「だからたぶん、国からの協力が得られるとは考えない方がいいわね。例え星霊使いが街に入れなくて困っていたとしても、神様が助けを求めて泣きついたとしても」
「……変な話だ」
「ええ……あ。ところで、肝心の『サギタリウスの石』のことだけど……」
俺は、リアの方を振り返った。リアは、なぜかもじもじしている。
「じいやばあやに怒られて、取り上げられちゃったの♪」
「……やっぱり?」
俺はため息をついた。




