061話 5月19日#03
俺が呆れて言葉を失くしていると、爺さんはこちらを振り返った。
「……もしかして、わしらの孫を見たのかの?」
「ま、孫……?」俺は目を瞬いた。
「そうそう。こう……目に入れても痛くないほど、きれいでかわいい子じゃよ」
「はあ……」俺は頭を掻いた。「俺が見たのは、とりあえず何かお洒落な人ではありました」
植え込みで鏡を見ていたんだ。間違いないだろう。
「あの子、今絶賛反抗期中でのう」
「はあ……」
「わしらとひとことも話そうとしないんじゃよ」
「はあ……」
「困りますよねぇ」婆さんも、同じテーブルに座った。「あの子、重要な仕事があるのに、それ放り出してどこかで遊んでばかり……」
「どこをほっつき歩いてるのか」爺さんはため息をついた。「ホント、男をたぶらかせるのが上手くてのう」
「お兄さんも気をつけてくださいな。あと、あの子を見たら、すぐ家に帰るよう伝えてくださいな」
「えっと、あの。その『お孫さん』のことなんですが、」えい、ストレートに訊いちゃえ。「もしかして、『いて座の星霊使い』ですか?」
すると、急に2人は黙り込んでしまった。
「え?あの……?」
「君は、『星霊使い』なのかの?」
「あ、いいえ」俺は首を振った。「『星霊使い』の友だちがいるだけです」
「「ホントじゃろうな?」」
――何か急に、2人の笑顔が怖くなった。
「はい。で、でも、用があるのは、そのお孫さんが持ってるかもしれない『石』の方で……」
「「ホントじゃろうな???」」
――圧がすごすぎる。
「……そ、そんなにウソついてるように見えます、俺?」
「そう言って、幾度となく『ピース教団』の連中がこの店に訪ねて来たからのう」
――『ピース教団』……ケレスの街で聞いた時以来の言葉だな。
「……ということは、『石』はここにあるってこと……?」
「どこの馬の骨ともわからぬ奴に、わしらの孫と『石』は渡せぬ」
「……とりあえず、ここにあるってことか……」俺はちょっと考えた。「それじゃあ、その『星霊使い』の友人と……もう1人、『石探し』の手伝いをしてほしいってお願いしてきた友人を連れてくれば、『石』を渡してもらえますか?」
「いつ連れてくるんじゃ?」
「あ……明日……」
「……んー、そうかの」
爺さん婆さんは、身を乗り出していたのを止めて、椅子に座り直した。
「その条件は飲むことにしよう。ただし、もしウソをついてたら、わしらがこってり懲らしめるからの」
「もちろん『明日』という言葉も含めて、ですよ?」
「は、はい……」
弓矢を所持していたことから「あの小人が『サギタリウス』かもしれない」と思ったことが原因で、気がつくと大変なことになった。
――監視されてる『友人』たちを、どうやったらこの店に連れて行けるんだ……?




