006話 5月10日#06
そんなこんなで、レイと『幼虫』を連れて、俺は自宅に着いた。
『幼虫』が暴れていた区画からはちょっと遠く、中心街から離れたところにある。家を買う金はもちろんないので、アパートの一室を借りて生活している。
幸いなことに管理人は留守で、他の居住者ともすれ違わなかった。俺は玄関の扉を開き、レイを中へ通した。
「ほお、」レイが周りをまじまじと見ていた。「これが普通の『アパート』か」
「……ひとり暮らししたことねえの?」
「野宿なら、したことある」
俺は頭を掻いて部屋の片隅に片付けてあった毛布を取り出し、ラグの上に置いた。
「……うん。まあ、2つに折り重ねれば、寝れないこともないか」
「ん?」レイは首を傾げた。「私のベッドを作ってくれてるのか?」
「俺のだよ」俺は、今日何度目かのため息をついた。「さすがに、客を床に寝かせるのはどうかと思って……」
「じゃあ、このヒトがここに寝て、私は毛布の上で寝る」
そう言って、レイはベッドに『幼虫』を寝かせ始めた。
「俺が寝る場所を盗るなよ……だいたい、その『幼虫』は何?」
「神様」レイは大真面目な顔をした。「『月の神様』だよ」
「月の……これが?」
――残念ながら、俺の目にはモンスターか何かにしか見えない。
「うん」
「レイは、この『月の神様』と面識があるのか?」
「いや。今日初めて本物を見た」
――どうも、この情報の信憑性はない気がする。
「ただ、どんな姿をしているのかは聞いたことあるし、月から落下してきたから間違いないと思う」
「うーん……」月から落ちてきたのか。「じゃあ、どうして月から落ちてきたのかわかるか?」
「わかんない」
――そう言うと思った。
「たぶん、そのあたりは本人に聞いたほうが早い……たぶん、明日くらいには復活していると思う」
『たぶん』を2回重ねた。
「じゃあ、レイは何者なんだ?」
「……ただの通りすがりの魔法使い」
「なわけねえだろ」俺はため息をついた。「あんな魔法が使えて、その『幼虫』の正体|(仮)を知っているやつが『ただの通りすがりの魔法使い』なんて……」
「それもそうだな」レイは天井を見つめた。「私は……12人いる『星霊使い』のうちの1人だ」
「『星霊使い』?」
「別名『USS』」
「いや、別名言われても……」
「よし!じゃあ晩飯にしよう!」勝手に話を切り上げられた。「さっき市場で買ってきた料理、早く食いたい……!!」
「いや、えーっと……もういいや!俺も腹減ったから食おう!」
その後の食事の間に、俺は何とかレイから『星霊使い』の正体と『緑色の石』が何なのか、話を聞き出すことができた。
食器を片付けて歯を磨き、シャワーを浴びた後にレイを見ると、『月の神』を抱いてぐっすり眠っていた。「触り心地がいいのか?」と首を傾げながら毛布にくるまり、俺も眠りについた。




