059話 5月18日#05−5月19日#01
その日の夜、城壁の上で見張り番の仕事をしながら、一緒に仕事をしていた兵士たちに、それとなく『石』について訊いてみた。
「あ!それ、俺見たよ!」見張り兵その1がそう答えた。「何か知らんが、1個はこっちに向かってきたかも」
「俺も、見た見た!」見張り兵その2も、そう言って頷いた。「昼なのに暗くなってびっくりしている時に、さらに突然流れ星が現れるなんて!」
「でも、不思議なんだけど、」見張り兵その3は首を傾げた。「その『流れ星』については、新聞にひとことも書かれてなかったな」
「もしかしたら、流れ星じゃないのかも」見張り兵その1はそう言った。「まさかの最新式の兵器とか」
「俺たちの知らないところで?」
「軍の上層部が何考えてるかなんて、俺たちにはわからねえだろ?」
「……で、結局あれどこに落ちたんだっけ?」
「『旧市街』のどこかって聞いた気がする」
「じゃあ休みの日に、俺らも行って探してみるか!」
「『兵器』を?怖えな!」
「「「わははははははは!!!」」」
――以上が、兵士たちから得た情報である。
多くの証言があることから、『旧市街に落ちた』というのはわりと信憑性が高い。
ただ、目撃者がちょっと離れたところにいた人たちだからか、旧市街の『どこ』に落ちたかまでは特定されていない。
「あと、『新聞』かあ……」
『新聞記者と話していた』と、『新聞には載ってなかった』――そういえば、今まで『新聞』など読まずに『石』を探していた。
だが、『新聞』の記事にヒントとなる情報が含まれている可能性は、十分にある。
『新聞』というアイテムに今さら気がついた自分に呆れつつ、夜遅くに帰った宿でぐっすり眠った。
翌日の午前中。
俺は先に『ありさん』で報酬を受け取ってから、レイとピエールネックレスに、いつものように小声で報告した。
『兵士たちの目撃情報!なかなか有力じゃないですか!』ピエールネックレスがレイの胸元でピンク色に光っていた。
「キュウシガイ……広い?」
「そうだな」俺は地図を広げた。「ユピテルの北東のこのあたりの区画が、全部『旧市街』って呼ばれているみたいだ」
『そこの探検……もとい調査は、自由に動けるカイトさんに頑張ってもらった方がいいですね』
「ガンバレー」
「お、おう。頑張るよ……」
今日の俺たちは、街の探検はせずに近くのカフェで世間話をしていた。その中で気づいたのが、ジャクリンさんがテルメア語が上手い……だけでなく、なぜかレイもテルメア語が上手であることだった。どうりでテルメア人として押し通せるわけだ。
俺1人だけ、さっぱり会話がわからずぼんやりしていると、ふと窓の近くにある植え込みが目に入った。
――植え込みを囲むレンガの上に、ちょこんと女性が座っていた。
アッシュブラウンの髪に青い瞳。妖精のように可憐な服装だが、落ち着いた茶系統の色で統一されているので、大人っぽさも感じさせる――そして何より、小さい。身長が10センチくらいしかない。
彼女は、今は髪留めの調整をしている最中で、鏡を見つめていて、こちらには全く気づいていない。
――幻覚ではない。ちゃんと影もあるし、瞬きもしてるし、細部まではっきり確認できるし、背中にはなぜか弓矢を背負っているし……間違いなくそこにいる。
しばらく彼女を凝視していると、ようやく俺に気づいた彼女が、めちゃくちゃ驚いた顔をして、レンガの上から飛び降りた……のだが、鏡をレンガの上に置き忘れてしまい、のそのそと戻ってきた。
そしてこちらをチラッと振り返った後、今度こそ地面へ飛び降り、二度と植え込みには戻ってこなかった。




