054話 5月17日#05
「おい!待てよ!」
俺は、慌てて『忍者』を追いかけた。が……
「ま……は、速え……」
俺は、体を動かすのはだいたい得意だという自負があるので、足もそこそこ速い方だと思っていた。
だが、この『忍者』は、もっっっっと速い。何だあれ……ダチョウの生まれ変わりか……?
――だが、速すぎるがゆえに、『忍者』は痛恨のミスを犯した。
「……行き止まりでござる!!」
「……追いついた!!」俺は息を切らせながら、『忍者』の前に立ちはだかった。
「……そもそも、何で拙者を追いかけたのでござるか?」
『忍者』は観念したのか、俺にそう質問してきた。
「お前がいろんなもん盗むって聞いたから」
「拙者は何も盗んでないでござる!」
「この街でこんな怪しい格好してる奴が、他にいるか。さっき花屋から盗んだ花束持ってるし……」
「……ちっ!見てたでござるか……!」
すると突然、忍者は涙を流した。
「……実は先日、母親を亡くしてしまって、その墓に手向けようとこの花を……」
「……んなもん、盗んだ花ですることじゃねえだろ」
「それもそうでござるな」
「納得するなよ……」
「……とにかく!」忍者は一歩前に出た。「拙者を袋小路へ追い詰めたと思ったら、大間違いでござる!!」
突然、忍者は地面に何かを投げつけた。そこから煙が噴き上がり、周囲に広がっていった。
「……ゲホッゲホッ」
「……さらばでござ……ゲホッ!ゲホッ!!」
煙が晴れると、そこには『忍者』の姿はなかった。
「あいつ……格好だけじゃなくて、忍者道具まで揃えてるのか……」
オタクもここまで来ると、呆れるというか、何というか。
「……まあ、俺には関係ないか……」
その時、俺ははっと、あることに気づいた。
「……ガイドブックがねえ」
その後、道を引き返した俺は、とうとうガイドブックを見つけることができなかった。
「……いや、俺は金も持ってるのに、わざわざガイドブックを盗むなんてこと、あるわけが……」
――いやいや。ぬいぐるみや花束を盗むような奴だから、ガイドブックだって……
しかし、困った。いちおうこの街の地図も|(今朝)入手してあったので、何とか大きな通りまで戻ることができた。
だが、ガイドブックがないと、どこにどんな店や施設があるのかわからん。
「うーん……」
一瞬、2冊目を買おうかとも思ったが、盗まれたのなら、つまらない奴に負けたようで何か悔しい。
「まさか……あいつが『いて座の星霊使い』ってことはないよな……?」
変人だし、身体能力バグってるし……その可能性も頭の隅に置いたほうがいいかもしれない。
「うーん……」
これ以上は、俺の頭では何も考えられない。とりあえず、さっき考えたアイディア『魔法石店に訊いてみる』を実行しようと、魔法石店を探し始めた。




