051話 5月17日#02
俺はしばらく、ガラスのショーケースの中の剣を眺めていた。
すると、ちょこちょことレイがそばに寄ってきた。
『何か手がかりはありましたか?』レイではなく、ピエールネックレスが小声で訊ねてきた。
「んー、まだ何にも」俺は首を振った。
『結構広くて、ちょっと困りますよね……』
「まあ、王都だからしょうがねえよ」
俺はしゃがんで、眺めていた剣を下から見上げた。
「すげーな、これ。『フェルヴィル』の剣なんだ」
『『フェルヴィル』……?』
「魔剣の素材の名前だよ。この剣は魔力がある人なら、魔法の杖みたいに使える。これは……」
――どうやら、振っただけで風が吹き荒れるらしい。魔力があれば、魔剣も悪くないなとは思ってるんだが。
「こっちのナイフは『オリハルコン製』の……あ、レプリカか。さすがに店頭に『オリハルコン』は出せねえよな」
『『オリハルコン製』は、値段が高いんですか?』
「ああ。その代わり、斬れ味最強、研磨不要。しかも、斬った相手から魔力を吸収できる」
『……やっぱり剣に詳しいですね』
「まあ、好きで剣士やってるからな」
「……アレ、ナニ……?」
レイが俺の肩をつついてきた。何かの入れ物を指さしている。
「研磨剤だな。ちょっと珍しい色をしているけど」
なぜか鮮やかな紺色で、たぶん錬金術由来の成分が何か混ざっている。
「……ジャア、コレハ……?」
『それは料理に使う道具です。『おろし金』っていいます』
俺ではなく、ピエールネックレスが答えた。
「ふーん。包丁とかもあるし、剣以外にもいろんな物を作ってるんだな」
「……楽しそうですね」と、ジャクリンさんが話しかけてきた。
「そうですね」俺は頷いた。
「レイさんも信頼しているみたいだし、カイトさんが優しい方でよかったです」
「……『優しい方』?」
「『闘技士』だと聞きましたので、てっきりすごい荒くれ者なのかと」
「……あー、確かにそういう連中もいますけどね……」
――いちおう『騎士』の資格証明を得るには、『品行方正』であることも求められる。『品行方正』なんだぞ、俺。
「この街へ来たばかりで不安そうな様子ですし、レイさんのことお願いしますね」
「……あ、はい」
――たぶんレイが不安そうにしているのは、いつウソがバレるのか心配しているからだと思う。
まあ、それで外国人っぽく見えるなら、問題ないとは思うが。
その後、ライトニングさんが俺の剣を持って店の奥から現れた。
「……やー!すごいなー!」俺に手渡しながら、豪快に笑った。「小さい頃から、兄たち以上に俺の仕事に興味を持ってたからなあ……俺の自慢の娘だ」
俺は剣を鞘から抜いた。刃がつやつや、ピカピカに光っていて、見た限り、斬れ味もかなり良くなっている……気がする。
ライトニングさんも、かなりいい腕をしている。
「そいつをこれからも大事に使ってやってくれ!」
「はい!もちろん!」
――俺の愛剣だしな!




