050話 5月16日#06−5月17日#01
――というわけで、王宮前広場までやって来た。想像より植物が多く植わっていて、どちらかと言うと『庭園』と呼びたくなるくらいだった。
「……とはいえ、そんなに茂っている感じでもないな」
木も人の胸くらいの高さしかないし、どこにも死角ができないように、計画的に植えられているようだ。
「観光客が多いなあ……」
俺は周囲を見渡した。今は夕日が広場や王宮に差し込んでいて、白い壁が茜色に輝いているように見える。
「……えーっと、」俺はまたガイドブックを読んだ。「他に何があるんだ?」
しばらくぱらぱらめくっていると、不思議な言葉が出てきた。
「んー……『ギルド』?」
ガイドブック曰く、旧市街の中にはいくつもの小さな工房があり、様々な伝統的技術を持つ技術者がかたまって住んでいる地区があるらしい。
その技術者たちは同業者同士で『ギルド』という組合を作り、ギルドの中やギルド間で互いに支え合っているらしい。
「ふーん。鍛冶屋もあるんだ……」
何かちょっと気になる。明日、その旧市街へ行ってみようかな。
翌日。
何だかげっそりしているレイと、『スタッフ』という名の監視役の女性と一緒に、旧市街へとやって来た。女性はジャクリンさんという名前らしい。
「このあたりには、お土産にぴったりな工芸品を作ってるところが多いよ」と、ジャクリンさんは言った。
「お土産か……」
贈りたい相手は特にいない。強いて言うなら、今元気のないレイとか。
「何か気になる工房とかある?」
「えっと、俺は剣士なので、やっぱり剣作ってる鍛冶屋は気になります」
「それなら、ライトニングさんのところはどうかな?名工だって結構評判なんだ」
「案内してもらえますか?」
「いいよ。私、ここの近くの出身だから、顔見知りなんだ」
俺とジャクリンさんと、終始無言のレイは、稲妻の描かれた看板の工房を訪れた。
「お、いらっしゃい」爽やかな笑顔が眩しい60代くらいの男性が現れた。「おお。もしかして君は剣士なのかな?」
「はい」俺は、ガラスのケースに収まっている剣の刃を見つめた。
「お久しぶりです、ライトニングさん」ジャクリンさんが声をかけた。「最近見ませんが、メルバさんはどうされたんですか?」
「おう、久しぶり!……メルバねえ、」ライトニングさんは苦笑いした。「最近引っ越したわ」
「え?」
「「自分の工房を開くんだ!」って、この街から出てっちゃって……」
「……あれ?『メルバ』さん?」俺は目を丸くした。「もしかして、ケレスの?」
「ん?知ってるのかい?」
「ええ……てか、この剣メルバさんのです」
俺が、そう言って手持ちの剣をカウンターの上に置くと、ライトニングさんはしげしげと剣を眺めた。
「へえ、あいつ知らない間にまたずいぶん腕を上げたね」ライトニングさんは剣を鞘から抜いた。「これは斬れ味も良さそうだし……しかも、魔法が使えるね、これ」
「前からの攻撃に耐えられます」
「これは、いい『魔法彫師』が仲間にいるんだな。俺とは違う」
「確かアンナさんって人が、その剣の魔法を仕組んだとか何とか」
「へえ、女の子2人で……いいな!」
急に、ライトニングさんはカウンターから身を乗り出してきた。
「ちょっとこれ見せてくれないか。娘がどんな剣を作ってるのか知りたい」
「あー、はい」
「ついでに研いであげるよ、まけとくから」
「え?ホントに?」
「ああ。終わるまで30分くらいかかるから、しばらく店の商品見てていいよ」
「わかりました。お願いします」
俺がそう言うと、ライトニングさんは嬉しそうに奥の工房へ歩いていった。
魔法彫師は、『ある条件を満たすと自動的に魔法陣魔法が発動する特別な模様』を道具に彫る(描く)人のことです。




