048話 5月16日#04
「では、次の方どうぞ」
制服が似合わないくらい優しそうな女性の兵士に促され、俺はゲートのそばに近寄った。
「俺、『騎士』の資格証明持ってるんですけど」
俺はそう言って、持ち物と共に資格証明書をトレイに置いた。
「……騎士?ホントに?」
『意外ですね』
――後ろから聞こえてきた声は、聞かなかったことにした。
「確認が取れました」兵士は、俺に向かってニコッと笑った。「帯剣可能ですが、騒ぎを起こさないでくださいね」
「ありがとうございます」
――何となく、兵士の笑顔が怖くなってきた。
「お次の方どうぞ」
「……あー、ワタシ、外国人、デス」
緊張しすぎて片言になってるレイの言葉に、俺は思わず笑い出しそうになった。
「どちらから来ましたか?」
「て、テルメア……ボーメイ?」
「かしこまりました。では、ちょっとこちらに来ていただいて……」
亡命する人なんてそんなにたくさんいるとは思えないのだが、兵士はあっさり受け入れてくれた。
レイは言われたとおり、紙にいろいろと記入していた。そこに、今度は男性の兵士が近寄ってきて、何やら話をし始めた。
俺は、ゲートから少し離れたところにある柱の陰から、その様子を見守っていた。
しばらくして、レイがカチコチに固まった。何かマズいことでも起きたのか……と内心ヒヤヒヤしたが、しばらくして無事にゲートを通らせてもらえた。
「……はー」レイは俺のそばに近寄ると、柱にもたれかかった。「今までのどの戦いよりも緊張した……」
その時、ぽんと音を立てて、ピエール33世が現れた。紫色に光っている。
『カイトさん、あのー』
「何か問題でもあったのか?」
『えっとですね、いちおうテルメア人ということで通ったんですが、』
「亡命申請をするよう言われて……」レイはまだ柱に寄りかかっていた。「その申請が通るまでに1週間はかかると言われて……」
『それまでユピテルにずっと滞在するよう言われちゃいました』
「1週間!?」
――まさかの、時間拘束……!?
「うーん……そうか……」俺は頭を掻いた。「長いが、その分この街をゆっくり調べて回れると思えば……?」
「……あと、その間、専用の施設に入ってろって言われた」
俺は目を丸くした。
「……外出できないのか?」
『全く出られないわけではないのですが……』ピエール33世は紫の光を点滅させた。『出かけている間は、スタッフが1人付き添うようです』
「……え」
――つまり、監視がつくということか。
『カイトさんのことは『友人』として通したので、カイトさんと一緒にいるのは問題ないと思います。たぶん』
「でもこれから、そのスタッフに施設まで連れてかれるみたい」
「お、おう。そうか……」
――でもまあ、こればかりは仕方がない。レイにスパイとかの疑惑を持たれなかっただけ、マシかもしれない。
『心配なので、ワタクシがまたネックレスに変身して、レイさんについていきますね』
「ああ。それがいいな」俺は頷いた。「よろしくな」
「うー……」レイは涙目になっていた。
こうして俺は2人と別れ、1人でユピテルの街へと踏み出した。
『ライセンス』は、試験に合格して取得できるものです。私たちになじみがある『簿記検定』とか『カラーコーディネーター検定』とかみたいなやつ。カイトの『騎士ライセンス』は、あれば無条件で兵士の『見張り番』などの仕事ができるようです。




