045話 5月16日#01
翌日の午前中。
俺たちは、もう何回目だかわからないけども、バル『林檎飴』へとやって来た。
「お。いらっしゃい」トミィさんは、いつもどおりにこにこと笑った。「今日はどうしたんだい?」
「えっと、俺たちそろそろ次の街へ行こうと思ってまして」俺は袋を見せた。「世話になったお礼にこれを渡そうと思って……」
「……お?いい匂いがするぞ?」
「さっき作ったばかりです。ミライと一緒に食べてください」
「いやー、ありがとう!早速いただくことにしよう――ミライ!おーい、ミライ!!」
「……たく、何だよ」ミライが気だるそうに姿を現した。「……いや、お前ら何でここに!?」
俺たちを見て、ミライはかなり驚いていた。
「これ持ってきてくれたんだよー」トミィさんは、袋の中をミライに見せた。「早く食べよう!」
「林檎飴……か」
ミライは袋から、紙に包まれた林檎飴を1つ、取り出した。
「うん、」紙を剥き一口食べて、ミライはつぶやいた。「……美味い」
「……やー!」トミィさんも美味しそうに食べていた。「店名の由来がミライの好物だって、わかりました?」
「ええ。何となく」
――市場でリンゴを欲しそうにしてたし。
「いやー。ミライが子どもの頃、兄夫婦が急に亡くなってしまって、私が預かることになったんですが、始めのうちは全然心を開いてくれなくて……でも、たまたま林檎飴買ってあげてみたら、想像以上に嬉しそうに食べてくれまして。それがきっかけで少しずつ会話が増えて……」
「……そんな恥ずかしい過去を、人に言うな」
ミライは不機嫌そうな声で言ったが、目は林檎飴にくぎ付けで夢中で食べている。
俺は微笑ましくなって笑うのをこらえながら、トミィさんに話しかけた。
「1つお伺いしたいことがあるんですが」
「ん?何?」
「牛乳の美味しい牧場を知りませんか?昨日市場に行った時に牛乳だけ見つからなくて……」
「確かに傷みやすいし、なかなか市場で買うのは難しいかもね――ちょっと待ってて」
トミィさんは奥にある洗面台で手を洗い、紙とペンを持って俺たちのところへ戻ってきた。
「手書きの地図で悪いんだけど、ここから南東の方に『ケビンさん』って人がやってる牧場があって、そこの牛乳は飲みやすくて美味しいよ」
トミィさんは地図を書いて俺たちに渡した。
『「「ありがとうございます!!!」」』
「それじゃ俺たち、そろそろ行きますね」
「うん!またこの街に来ることがあったら、うちにも遊びにおいで!」
「……今度こそ、本物のアリエスをぶっ潰す」ミライはチラッとレイの方を見た。
「……それは楽しみだ」
俺たちは『林檎飴』の店先で手を振るトミィさん|(隣に林檎飴を食べるミライがいた)に手を振り返してから、教えてもらった牧場へと向かった。
のんびり歩いている俺の隣で、ピエール33世はご機嫌な黄色い光を点滅させた。
『この街でも、何だかんだいろいろありましたね!』
「何かなー。思ってた以上に濃い日々を送っている気がする」
「……次の街は、どこだ?」
レイは訊ねると、すかさず全国地図を取り出した。
『王都……『ユピテル』ですね』ピエール33世は、ある場所をアームで指した。『そこは『いて座の星霊使い』さんの故郷です』
「そこにいてくれるといいな」俺は今までの旅を振り返った。「スターリアもミライも、故郷にいてくれたから問題なかったけど……」
「まあ、それは行ってみないとわからないな」
俺はぼんやりと上を見上げた。青い空が広がっていた。
そろそろ雨が降らないと、また街を『アップル・グラトニール』に荒らされるかもな……と思いつつ、俺はレイやピエール33世と一緒にぶらぶら歩いていた。
トミィさんの思い出話は、ミライが5歳くらいの時の話です。当時は今より少しだけ素直だったようです。




