044話 5月15日#07
それから20分ほどがたち、『アップル・グラトニール』は一掃された。店の人たちも、それぞれ独自の『水鉄砲』を持っていたらしく、意外と早く沈静化した。
「ありがとう、みなさん!」リンゴ屋のおばさんが、その場に集まっていた人々にお礼を言った。「おかげで、商品は無事でほっとしてます。もしよろしければ、1人1個ずつリンゴを召し上がってください!」
俺は、近くにいたミライの顔をちらりと見た。少しだけ頬が緩んでいる気がする。
「……おお!デザートだ!」レイはすぐにおばさんのところへ行ってリンゴをもらっていた。
「…………おい」
急にミライがこちらを振り向いた。
「『月の神』とは何だ?」
――ぎくり。
「……まあ、ロボットのくせに大げさに感情を表していたから、変だとは思っていたが」
ミライは、じっとピエール33世を見つめた。やがて、ふんと鼻を鳴らすと、こう言った。
「……この国の北端に『ヴィクトリア』って街があるだろ――そこに『おとめ座の星霊使い』がいる。話してみるといい」
それを聞いた俺とピエール33世は、互いに顔(とカメラ)を見合わせた。
ミライはぼそっと「それだけ言っておけと言われた」と言い残し去っていった。
「おーい、カイトー」レイの間の抜けた呼び声が聞こえてきた。
「レイ……え?」俺は目を丸くした。「そのリンゴは?」
リンゴ屋のおばさんは、確か「1人1個ずつ」と言っていた気がするが、レイが手にしている袋の中には6個くらいリンゴが入っていた。
「1個もらった」
「他のは?」
「……買った」
――いや、さっきいっぱい買っただろうが……!
「ねえねえ」レイは何か思いついた時の顔をしていた。「これで『林檎飴』作らない?」
「……何で?」
「プレゼント」
『…………?』
その後、仕事をしようとして果樹園に着いたら、なぜか農家さんたちから感謝された。
どうやら果樹園で大量に見つかった『アップル・グラトニール』を退治していたら、一部が街の方へ逃げ出してしまったらしい。
「さっき役所に電話して撃退するようお願いしたんだが……折り返しで「もう大丈夫」って言われて、早いなあと思ってたんだけど」
「あれは、時間がたてばたつほど数が増えて、手が付けられなくなるからね」
「でもまあ、いちおう見回りはするよ。また集団で森からやって来るかもしれないし」
「よろしくお願いします!」
その仕事が終わった後、俺は昨日泊まったのと同じ宿へやって来た。
すると、すぐにピエール33世が俺のところへとやって来た。まだ宿の中には入っていなかったらしい。
『見てください!』ピエール33世は、俺に何かを差し出した。『おいしそうな林檎飴でしょ!?』
「確かに」俺はじっと林檎飴を見つめた。
『それは試作品です。どうぞ召しあがってください』
「そうか。じゃあ遠慮なく」
――パリパリ、シャクシャク。
「おお!なかなか美味いじゃん」
『それはよかった!』
「でもこれ、どうすんだ?」
『あ。実はですねー……』
カイト:ところで、レイは?
ピエール33世:レイさん……『先に宿に入ってる』と、先ほどおっしゃっていたんですが……
カイト:いないぞ?
ピエール33世:まさか、迷子……!?
カイト:いや。宿すぐそこにあるし!
ピエール33世:これは……事件ですね!
カイト:もう夜だし、どうしたら……
レイ:おう!2人とも、奇遇だな!
カイト:何が『奇遇』だ!心配させやがって……!
ピエール33世:……で、どこ行ってたんですか?
レイ:迷子を見つけて、両親を探してあげてた。3時間前に。
カイト:……その『3時間』は、何してたんだ?
レイ:私が『迷子』になってた。
カイト、ピエール33世:………………




