042話 5月15日#05
街の一角に、大きな木が生えている小さな公園があった。ピエール33世はそこを見つけると、ぽふんと音を立てて煙に包まれた。
そして、そこにピエール号のものに似たキッチンが現れた。
――そしてなぜか、俺とレイはエプロンを着けていた。
「なぜこうなる?」レイは、珍しくむっとした顔をした。
「……てか、仕事が……」
『大丈夫です!1時間くらいで終わりますから!』ピエールキッチンは、頭の上の照明を黄色く光らせた。『とりあえず、香辛料をふんだんに使った鶏肉のソテーとトマトサラダ、デザートに焼きリンゴを作りましょう!』
――なんかメニューも決まってるらしい。
『準備はできましたか?――それじゃ、レッッッッツ……クッキーーング!!!』
妙にテンションの高いピエールキッチンの指導の元、俺とレイは料理をする羽目になった。メニューはそんなに難しくないとはいえ、こんな街なかでやるなんて……
――と思ったが、意外と楽しかった。すぐに詳しい作り方は忘れたが。
『お味はいかがですか?』
俺たちが出来上がった料理を食べていると、ピエールキッチンが楽しそうに話しかけてきた。
「……普通に美味いよ」
「さすが『料理の神』……間違えた、『月の神』だな。指導が的確だった」
『わー!褒めてくださって嬉しいです!!』
顔もないのに、照明がピンク色になっただけで、本当に喜んでいることがわかった。
「買った食材使って、しばらくの間の食事を作ってくれるのか?」
俺がそう訊ねると、『いやいや』とピエールキッチンは言った。
『ワタクシたち3人で作ります!』
「えー、めんどー」
レイが口を尖らせていると、突然何かが後ろの草むらの中から飛び出してきた。
「な、何だ?」
「よくわからんが……もふもふだな」
レイの言うとおり、そこには赤くてツヤツヤした毛に覆われたクッションみたいな生き物|(?)がいた。
『…………あ!!』
ピエールキッチンは小さく叫ぶと、ぽふんと煙を噴き出した。
「……けほっけほっ」ピエールキッチンの中にいた俺たちは、煙を吸って咳をした。
ピエールキッチンが消え、ピエール33世が現れると、俺は早速訊ねた。
「急にどうしたんだ?」
『……あのモンスターは『アップル・グラトニール』っていうんですが……』
――『モンスター』?あんまり強そうじゃないが……?
『かなりの悪食なんです!しかも!リンゴの葉っぱや果実が大好き!』
そんなことを言っている間に、『アップル・グラトニール』はまた1匹、また1匹と草むらから現れてくる。
『市場に向かわれると、あの果物屋のおばさんが危ないです!商品も!』
『アップル・グラトニール』は、ぴょんぴょん飛びながら、市場のある方を目指して動き始めた。
「そういうことなら、『クリムゾ』……!」
魔法を使おうとしたレイの腕を、俺はパシンと叩いた。
「こんな街なかでド派手な魔法使うんじゃねえよ!後を追うぞ!!」
「……はーい」
俺は市場の方へと駆け出した。その後ろを、レイとピエール33世が飛んで追いかけた。




