040話 5月15日#03
「……強いのは認める」
『林檎飴』へ戻ってきた俺たちは、先ほどまでよりさらに機嫌の悪そうなミライからそう言われた。
「じゃあ、約束通り……!」
「これが『やぎ座の石』だ。欲しけりゃ持って行きな」
ミライが片手でテーブルの上に置いた石は、琥珀色をしていた。
「「おお!やった……!」」俺とレイは、思わずハイタッチした。後ろで黙って飛んでいるピエール33世も、明るいピンク色の光を放出していた。
「……ただ、1つだけ訊きたいことが」
「何?」俺はミライの顔を見つめた。
「なぜアリエスは、魔法で攻撃してこなかった?」
「俺、『アリエス』じゃないんだけど」
「……は?」
「『アリエス』は、レイのことだよ」
俺に指さされたレイは、さっさと『石』を仕舞っていた。
「…………」
「俺はただの剣士。魔法は使えない」
「……………………」
ミライはしばらく黙っていたが、やがてはあとため息をついた。
「……俺は『ただの剣士』より弱いんだな」
俺はきょとんとした。
「『弱い』って、1回負けただけだろ?」
「そもそもまず、『マシンガン』の弾を全て無効化する方法があることを知っておくべきだった」
「……ミライ?」
「剣士に剣で対抗しようとしたのもいけなかった。何か他の攻撃手段を考えないと……」
「……おーい、聞こえてるかー?」
ミライがぶつぶつ独り言をつぶやいて、こちらの話を聞いてくれなくなったので、俺はレイの方を振り向いた。
「……今回は何とかなったが、次はないと思えよ」
「ナニガー?」
「ちゃんとわかって言ってるだろ!」
「ワカンナイー」
「なかったことにしようとしてるな?俺は結構根に持つタイプなんだぞ!」
「ヘー、ソオナノー?」
「少しは反省してくれ。ミライが俺を魔法で集中攻撃してたらどうなったか……」
「ゴメンナサイー」
「全然反省してねえし!」
俺が頭を抱えていると、トミィさんが微笑みながら皿を運んできた。
「……これは?」
「うちの看板商品『生ハムと野菜のオリーブサンド』だよ。お腹空いてるだろうから、これでも食べて」
生ハムのサラダをパンに挟んで、オリーブオイルをかけたようなサンドイッチだった。食べてみると、食材それぞれの個性豊かな味や匂い、食感が楽しめて、しかもめっちゃ美味い。
「……食べやすいな、これ」レイも満足そうに食べていた。
「気に入っていただけたら、何より」トミィさんは、ポケットから懐中時計を取り出した。「……あ、そろそろ12時だね。君たちはこれからどうするの?」
「仕事までまだ時間があるし……」俺は天井を見上げて考えた。「ちょっと観光するか」
俺の後ろでピエール33世が、ピンク色に光りながら悶えていた。




