028話 5月13日#06
このエピソードから、ノベルアップ+版と同時公開となります。
「『みずがめ座の星霊使い』なのか?」
レイは女に訊ねた。
「ああ、そうだ」女は、じっとレイを見据えていた。「どうせ興味ないだろうけど、『スターリア』って名前だ」
「『石』のありかを知ってるか?」
「まあな。だが、」スターリアはふんと鼻を鳴らした。「てめえなんかに渡すつもりはない……てか、渡すなと言われている」
ちょうどその時、俺は1階にたどり着いた。俺は、看守たちに見つかる前に、大きな声で叫んだ。
「早く逃げろ!!ここにいたら、絶対危ないぞ!!!」
すると、1人の看守がこちらに近づいてきた。
「お前、誰だ?俺たちの邪魔をするな……ぐうっ!」
俺はまた、看守を殴って黙らせた。
「とにかく逃げろ!!!あの2人の戦いに巻き込まれたら……!!!」
――ズドーーーーーン!!!!!
爆発が起き、いろいろな物の破片が頭上から落下してきた。
労働者たちも、看守たちも、ざわざわと言葉を交わしていた。
「逃げろ……早く!!!」
ようやく、みんなが動き出し、外へ通じていると思われる大きな扉に向かった。看守の中には労働者たちを押しのけようとしている者もいたが、ほとんど全員がパニック状態で、他の人にかまっている暇はないようだった。
『カイトさん!』ピエール33世が現れた。『他の階の皆さんは、みんな避難を始めました!』
「残念だが、その人たちのことをかまっているヒマはないな」と俺はつぶやいた。「柱も壁も天井もぶっ壊れてる……このままだと、この建物が崩れる」
『どうしましょう?……といいますか、』ピエール33世はカメラを上に向けた。『レイさんと戦っているのは、どなたです?』
「アクアリウスらしいぞ。しかも、『石』を渡すのを拒否してる」
「……どうして『石』をくれないんだ?」
レイは、落ちてきた天井の破片を避けながらスターリアに訊ねた。
「だから、『石』を渡すなと言われている」
「誰から?」
「そんなの教えるわけねえだろ」スターリアはギターを構えた。「どっちにしろ、アタシは持ってないけどさ」
するとギターをかき鳴らし、その場でジャンプした。
「『ビートステップ』!」
スターリアは見えない足場に飛び乗るように下りて、空中で静止した。それから再びジャンプして、同じ魔法をかけた。
スターリアの動きはどんどん速くなっていき、あっという間にレイと同じ高さまで上り詰めた。
「じゃあ、『石』はどこにあるの?」
「知らねえよ!」スターリアはレイに向かって跳び上がった。「あの領主の父娘に聞けよ!あいつらが持ってるんだからさ!」
「え……」
俺はそれを聞いて、その場で固まってしまった。
「『グルーヴランス』!」
「『クリムゾンブレス』!」
2人の魔法がぶつかり合い、また爆発が起こった。
そして、建物の天井が、少しぐにゃっと曲がった。
「時間がない!?」
『あ!そうです!』ピエール33世が白くピコンと光った。『いいことを思いつきました!』
「……何?」
『ワタクシが、建物が倒壊するまでの時間を稼ぎます!ワタクシの魔法で、この建物を守るんです!』
「そんなことできるのか?」
『ええ!たぶん15分くらいしか保ちませんが』
「じゃあ、その間に全員を建物の外へ避難させる!」
『よろしくお願いしますよ!』
ピエール33世がオレンジ色に光ったのを見てから、俺は出口の扉の方へ走った。そこに集まった人たちを落ち着かせようと、必死に呼びかけた。
「落ち着いてください!まだ建物が崩れるまで時間があります!!」
あの2人が戦いを止めたら……とも思うが、やっぱりそうはいかないものかもな……。
???:スターリアさんは、その楽器をどこで手に入れたんですか?
スターリア:星霊界のアタシの家の隣の『みなみのうお座』とかいう奴が、何を思ったのかアタシとやぎ座の星霊使いを引き合わせてさ、『プレゼント交換』とかいうのやらせやがって……その時もらったギターだ。妙にデカい音が鳴るから気に入ってる。
???:それ、珍しいギターですよね?
スターリア:詳しいことは知らねえ。何年か後に開発されるとか何とか言ってたけど、よくわかんねえ。本人に訊きな。
???:そうします。




