026話 5月13日#04
明かりが少なく薄暗い11階を用心深く歩いていると、突きあたりに大きな鉄の扉があることに気づいた。なぜかわからないが、表面が赤い塗料で塗られており、何となく嫌な気持ちになった。
『この扉……ちょっと変ですね』
「『変』って?」
『えーっとですね』ピエール33世は言いにくそうにしていた。『この扉、魔巧機械が埋め込まれておりまして……『許可された人』以外はこちら側に戻れなくなっています』
「『許可された人』?」
「私の考えが正しければ、さっきの2人組のような人だと思う」レイは触ることなく、しげしげと扉を見つめていた。「で、他の人は行ったきり、戻ってこれない」
「……やっぱり?そういうこと?」
ホント、嫌な気分にさせる扉だ。
「……で、行くか?」
「ああ」俺はにやりと笑った。「戻る時は、扉でも壁でも何でも、みんなぶち壊せばいい」
『何となく思うのですが、』ピエール33世は、楽しそうに黄色く光った。『このメンバー、ブレーキ役がいませんね』
「じゃ、扉の奥へ、れっつごーーー」
レイの間の抜けた掛け声とともに、俺は重い鉄の扉を開いた。
扉の向こうには、予想どおり下へと向かう階段があって、その下の階には薄暗い廊下があった。ピエール33世とレイの両耳の明かりを頼りに進むと、両側に鉄格子のついた部屋が見えた。中に人がいる。
「おーい」レイが声をかけた。「ここってどんな場所なんだ?」
――誰も返事をしない。ただ、生気のない目でこちらをじろっと見ただけだった。
「この人たち、まさか……」
『たぶん、その『まさか』でしょうね』と、ピエール33世は言った。『しかも、たぶん……』
「誰だ、そこにいるのは!?」
後ろを振り返ると、レイがいない。ここの人に話しかけたくせに、通路の先の、明るくなっている出口までもう行ってしまっている。
『あ、この場はワタクシにお任せください』ピエール33世は、ピコンと柔らかめのオレンジ色に光った。『何かレイさん、暴走しているみたいなので』
確かに、見るとレイが何かの魔法を使って、壁が砕けるほど大きな爆発を起こしていた。
「ああ、わかった」
俺はその場を後にし、レイの近くまで走っていった。
「おい!あそこに誰かいるぞ!!」
「侵入者だ!」
「魔術師だ!」
「……飛んでいる!?」
レイは、誰かからの魔法を軽くかわして、宙をふよふよと浮かんでいた。
「ようやく着い……え!?」
明るいところは、かなり広い部屋、というかスペースになっていた。1階から10階までぶち抜かれた円筒状のスペースで、壁にたくさんの照明がついていた。
その1階には、外との出入り口があり、何か黒いものが入った手押し車を押している人たちがいた。その人たちの服は、みんな同じようなくたびれた服を着ていた。
今は全員がレイの方をぽかんと見つめて、作業の手が止まっている。
「とにかく、魔法で叩き落とせ!」
俺の横に、ぱりっとした立派な服を着ている人がいた。その人はレイの方ばかり見ていて、俺には全く気づいていなかった。
「全員一斉に魔法で攻撃しろ!いくぞ!」
その人が命令すると、同じような制服を着ている人――看守たち――が、魔法の詠唱の大合唱を始めた。
たくさんの魔法陣が展開され、いろいろな魔法が飛び出してくる。
「カウンター……」
「え?ちょっと待って!」俺は危険を感じ、咄嗟に通路の方へ戻った。
「『イグニスフィア』!!」
――ドーーーン!!!
予想どおり、建物全体が揺れ動くほどの大爆発が起こった。




