023話 5月13日#01
「……というのが、ウラヌスの街の基本構造になってるらしい」
翌朝、ホテルの洒落た朝食セットを食べながら、レイが説明をしていた。
何でも、昨日一緒に踊った紳士から、ウラヌスの街の中ではどうやって移動したらいいのか、情報を引き出していたらしい――そういうの、ちゃんとできるんだ。
レイによると、ウラヌスは建物同士が『転送球』の通り道であるパイプで繋がり、複雑な構造になっている。飛空艇発着場とセンタービルを繋ぐトランスボール以外は、行き先を伝えることで自動的に目的の建物まで運んでくれるシステムだ。
「……で、建物の上や下の階へ移動するには、『自動昇降機』ってやつに乗る」
「エレベーターは知ってる。ケレスにもいくつかあるから」
「……え?」レイがきょとんとしていた。
「闘技場にも小さいやつが5つくらいある」
「……ウソ?」
「いや、本当」
――そのくらい、信用してくれよ。
『でも、そういうことなら、ちょっと動き回るの大変そうですね』と、ピエール33世は紫色に点滅していた。
「立体的に動かなきゃいけないから、よそ者が歩き回るのは難しいかもしれねえな」
『……やっぱりガイドブック、必要そうですね』
「店行って買うか」
「どこの店に?」
「それは……えっと……?」
ホテルの従業員から観光案内所の場所を教えてもらい、そこで俺たちは、国内の『街歩きガイドブック』を手に入れた。
ちなみに、おまけでくれた音楽祭のパンフレットに、どこでどんなイベントが開かれるのか詳しく書いてあった。
「まず行くべきは……?」
「うーん……『鉱石博物館』?」
『隕石とかと間違われてる可能性は……ないわけではないと思います』
「でも、どうやって話を聞こうか?」
「ストレートに『この前、皆既日食中に地上に落ちた魔法石について、詳しく訊きたい』じゃダメなのか?」
「まあ、そう言うしかないが……」
――不審がられるかも。
「……でもまあ、とりあえず行ってみるか!」
訊ねてみると、誰も特に気にする様子もなく、普通に答えてくれた。
――けれども、博物館にいるスタッフも館長も、みんな「わからない」と首を振った。
「『流れ星』そのものは目撃してたようなんだがな……」
ついでに、展示物の『ロードクロサイト』を見てきたが、あの宝石がそれと同じなのか違うのかは、微妙だった。
「もっとケバケバしい感じだったような……?」
思い出せば、すごく毒々しい感じの石だったが、ピンクの服を着たエラが着けていたからか、あまり変だとは思わなかった。
「……次行くか」
その後、道ゆく人とか、売店のおばちゃんとか、星について詳しい天文マニアとか、いろんな人に訊いてみたが、有力な情報は得られなかった。
「天文マニアも知らないとなると、そもそもウラヌスには落ちてきてない可能性もあるな」
『そうですね』ピエール33世は下を向いて、紫色に点滅していた。『もし明日までに見つからなければ、別の街へ探しに行きましょう』
「……音楽祭楽しむ気、満々じゃん」
『……えへ!』
一転して、ピエール33世はピンクに光の色を変えた。




