022話 5月12日#08
「どういうことだ……?」
俺が呆然としていると、周りの人のひそひそ話が聞こえてきた。
「さっきのピンクの子って、リミドさんの娘さんよね?」
「ええ、間違いないわ」
「あの青年はずいぶん運がいいな」
「間違いない。この街一番の金持ちに相手してもらえたんだからな」
何だか棘のある言い方をしていたので、俺はさっさとその場から離れて、レイを探すことにした。
レイは予想どおり、料理の並んでいるテーブル付近にいた。
「うまうま!」料理にありつけて、幸せそうだ。
俺は小声で、レイと首元のピエールネックレスに、エラから聞いた情報を話した。
「うまうま!」レイはたぶん、聞いてない。
『うーん、『10階より下』ですか……』ピエールネックレスはレイの胸元で、淡く緑色に光っていた。『地下に鉱脈がある話と合わせると、ちょっと何かニオいますねー』
「うまうま!」
「それに、エラが着けていた石……本人は『ロードクロサイト』とか言ってたけど、何となく『リブラの石』の色違いに見えたんだが……」
『そのエラって子が、みずがめ座の星霊使いなのでしょうか?』
「確かに、『一昨日手に入れた』というようなことを言ってたし……でも、『父親からもらった』とも言ってたし……『石』なのかそうじゃないのか、どっちなんだろう……?」
『それだけの情報では、まだ判断できませんね』ピエールネックレスは話を切り上げた。『とりあえず、そろそろ退散しましょう。夜も更けてきたし、部屋に戻っても誰も咎めませんよ』
「そうだな」俺はレイに向かって言った。「帰るぞ、レイ。早く食いな」
「うーん……デザートがまだ……」
「食ったら太るぞ」
「うー。それはヤダー」
レイは、しばらく「むむむ」と悩んだあげく、ようやく重い腰を上げた。
「……はーっ!開放的!!」
俺はいつもの服に着替えて、ベッドに大の字になった。
「やっぱり、息の詰まる服は苦手だなー……」
『でも、様になってましたよ?ダンスもお上手でしたし』
元の球体ロボット姿に戻ったピエール33世は、枕の上でポンポンと弾みながら言った。
「俺は戦うほうが好きなの!」
「私はゴロゴロするのが好き〜〜〜」
レイは奥のベッドに寝転んで、読書しているようだ。
「それにしても、知らないことばかりだな」と、俺はつぶやいた。「すぐ隣の街なのに、音楽祭をやってるとか、地下に鉱脈があるとか、全然知らなかった」
『とりあえず、明日はどうしますか?』
「部屋にこもって読書……」
「……却下」俺はふうと息をついた。「普通に観光しよう。もしかしたら、他にも『石』の候補が見つかるかもしれないし」
『おや。観光に乗り気ですね』
「まずは、情報収集しないとダメだろ?」
『お〜!わかってきましたね〜!』
ピエール33世が黄色く光った。
「それにしても、この街……」俺はうーんと唸った。「一体どういう構造してんだろう?」




