019話 5月12日#05
球体は左右に曲がったり、上昇や下降を繰り返して、『街で一番高い建物』に向かって進み続けた。
やがて、カタカタという音が消えて、球体はその場で停止した。扉が開き、俺たちは球体の外へ出た。
そこから伸びる通路を歩くと、すぐに建物の中へと入ることができた。俺は目を丸くし、「すげー!」と、いつも通りの語彙力で感心した。
『おお、これは豪華ですね!』ピエール33世はカメラをあちこちに回した。『気分はまるでセレブですね!』
床に敷かれている長い真紅のカーペット。天井から吊るされているシャンデリア。壁には、堂々とした佇まいで前を見つめる50代くらいの男性の絵が飾られていた。
その向かいにある階段から下りてくる人々は、まさしく『紳士』『淑女』と言われるような、華々しい装いをしていた。
「すげー……けど、どうして俺たちはここへ連れてこられたんだ?」
「……さあな」レイは、ぼんやりと肖像画を眺めていた。
『なんだか場違いな感じがしますねえ……』
すると階段の上の方にいる誰かが、俺たちに声をかけてきた。
「そこにいらっしゃるのは、旅の方ですか?ようこそ、ウラヌスへ!」
声のする方を振り向くと、パリッとしたシャツの上に燕尾服を着て、頭にちょこんと帽子が乗っている紳士が、こちらをじっと見下ろしていた。
「そんなに警戒しなくていいですよ!私は、この街の領主の『ロイ・リミド』と申します」
「……あの絵の人だ」レイはぼそっと言って、後ろの肖像画を指さした――確かに似ている。
リミド氏は階段から下りて、俺たちの前までやって来た。
「実は今日から3日間、1年に1回だけある『ウラヌス音楽祭』が開かれるんですが……」
「お、『音楽祭』……?」
「……今夜はこれから、そのオープニングを飾るダンスパーティが行われます。会場はすぐそこの大広間です!」
男性は左の方を指さした。
「あなたたちも参加してみてはいかがでしょう?住民でも旅行客でも、誰でも参加できますよ!」
「『ダンス』ねえ……」
俺は苦笑いをしながら、リミド氏が指さした扉に目を向けた。
確かに俺は、運動は得意だが、ダンスはあまり得意とは言えなかった……というか、学校でのダンスの授業はサボっていた。
俺は実戦とは関係のないものに、あまり興味が持てなかった……のだが、結局サボっていたことがバレて居残りの罰を受け、先生相手にみっちりと練習させられたので、踊れないこともない。
俺は扉から目を離し、横をチラッと見た――ピエール33世はさておき、レイは踊れそうな気が全くしない。「ダンス?何それ、美味しいの?」とか言いそう。
「あのー、ダンスパーティには参加しなくていいですか?」
「えー!もったいない!」リミド氏は、大げさに残念そうな仕草をした。「参加費だけ払っていただければ、豪華なビュッフェを食べられるというのに……」
「豪華なビュッフェ!」レイの目がキラーンと光った。
「しかも特別キャンペーンがございまして……パーティに参加された方の中から抽選で5組の、3日間の宿泊費を半額にしております!」
「は、半額……!」俺の目もキラーンと光った。
「いかがです?」
「「……参加します!!」」」」




