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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
ウラヌス編

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018話 5月12日#04

 薄暗い通路を、ピエール33世のライトとレイの両耳のピアスのランプの灯りを頼りに進んでいった――この時初めて知ったが、レイのピアスはランプの形をしているだけでなく、本当に火を点けることができるらしい。


 やがて俺たちは、広い部屋へとたどり着いた。通路より少し明るかったが、これといって何もない部屋だった。唯一、奥の壁に丸い大きな穴が空いていた。


 穴へ近づくと、そこに大きな黒い球体があった。この建物の外にくっついている長く大きく透明なパイプの中で、ふよふよと宙に浮いている。


 球体には扉が付いていて、中に向かい合う座席があった。俺は後ろの2人の方を振り返り、「何か『乗れ』って言われてる気がする」と言った。



 「うむ」レイも球体の中を覗き込んだ。「6人くらいは乗れそうだが……乗ってみるか?」


 『そうしましょう!』ピエール33世はピカッと黄色く光った。『きっと、何かの乗り物ですよ!』



 俺たち3人は球体の中へ乗り込んだ。多少揺れるが、乗り心地はそんなに悪くなかった。



 「……で、どうすんだ?」



 俺たちが戸惑っていると、突然誰かの声が聞こえてきた。



 『ようこそ、最新魔巧技術の街『ウラヌス』へ。まもなく『センタービル』に向かって出発します。移動中は座席から立ち上がらないでください』



 ウィーンという音をたてて、扉が閉まる。俺たちが固まっていると、やがてカタカタ音をたてながら、球体が俺が座っている方向へ動き出す感覚が伝わってきた。



 『お?これは……』ピエール33世は、俺の膝の上に勝手に乗って、四方を見渡した。『すごいですね!この街の様子がよく見えます!』



 俺たちの乗った球体の上半分はガラス張りになっていて、透明なパイプ……というか、通路?……を通して、外の様子がはっきりと見えていた。移動速度もそんなに速くなかったので、街の様子をじっくり観察することができた。


 外から見た通り、この街には塔のように高い建物が乱立しているのだが、その間には低い建物がいくつも並んでいた。低い建物は屋根に何本も煙突を生やしていて、そこから黒い煙がモクモクと立ち上っていた。


 それぞれの建物には大きな魔巧送風機(サーキュレーター)がたくさん付いていて、人工的に強い風を吹かせて煙を空へと押し出していた。



 「すっげー!」俺とピエール33世は、窓に張り付いて外を眺めた。「これが『最新魔巧技術の街』なのか……!」


 『うーん。これは本格的にアレを買うべきでしょうか?』


 「……『アレ』?」


 『『観光ガイドブック』ですよ!』ピエール33世はくるくる回った。『これから向かう街の情報を、あらかじめ収集しておくんです!』


 「……観光する気満々だな」


 『だってもったいないじゃないですか!せっかくいろいろな街へ出かけるというのに……』



 その時、突然球体がガタンと音をたて、ゆっくりと上昇を始めた。ピエール33世はガツンと床に当たり、コロコロと座席の下へ転がっていった。



 「それにしても、どこへ向かってるんだろう?」俺はぽつりとつぶやいた。「『センタービル』って言ってたけど、もしかしてあの一番高い建物……?」



 チラリとレイの方を向いたら、レイは読書をしていた。こんなところでよく読めるな……と思いながら、俺は再び外の様子を眺め始めた。

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