017話 5月12日#03
やがて日が傾き、夕方になった。
俺は自分の部屋でストレッチしたり、ベッドでウトウトしたりしながら過ごしていた。
「そろそろ着く頃かな……」独り言をつぶやきながら廊下に出て、甲板へと繋がる扉を開いた。
すると前方に、大きくて黒い何かの塊が見えてきた。
「……ん?」
あたりが薄暗くなるなか、俺はじっと目を凝らしてその塊を見つめた。
ピエール号が近づいていくと、俺はその正体に気づいた――街だ!
――しかし、ケレスの明るく開放的な雰囲気とはまるで違う、独特な雰囲気の街だった。
天へと高くそびえる黒い建物が、身を寄せ合うようにしてたくさん建っている。その建物の間を、太いパイプが縦横無尽に走っており、さらにその隙間を縫って、下の方のどこかから黒い煙が立ちのぼっていた。
建物には、大小様々な歯車が付いていた。それが何なのかしばらくわからなかったが、少し経ってピンときた。
「水を地下から汲み上げてる……?」歯車に隣接する透明なパイプを眺めながら、俺は独り言を言った。「すげーな、こんな高いところまで水が通ってるなんて……」
『あ!飛空艇発着場への入り口を見つけました!』と、ピエール号は叫んだ。『なんかポートは奥の方にあるみたいです。揺れそうですので、どこかに掴まっててください!』
それを聞いた俺は、手近にある手すりに掴まり、身を低くした。
――ガタガタガタガタ……!
ピエール号は激しく揺れながら、暗いチューブ状の入り口を通っていった。周囲は真っ暗で、何も見えない。
しかしやがて、ピエール号は完全に停止した。
『どうやら、到着のようですよ』
「そう言われても、真っ暗で何も見えないんだが……?」
その時、ふっと明るくなり、俺は反射的に目を瞑った。ポートの壁にある2つのガス灯が、同時に点いたらしい。
ピエール号はタラップを伸ばし、俺はウラヌスの乗降場へと降りたった。
「なんか……静かだな」
『確かに、ケレスのポートと全然違いますね』ピエール号も、不思議そうに言った。
「構造が全然違うのか?」俺は奥の暗がりを見つめた。「もしかしたら、1つの建物に全部のプラットフォームが集まっているわけじゃないのかも……」
「んー!ふわああ……」レイがようやくプラットフォームへ降りてきた。「よく寝た……じゃなくて、無事着いたんだな」
レイが降りると、ピエール号はあっという間に縮んで、ピエール33世に戻った。
『とりあえず、先へ進みましょう!』ピエール33世は、奥の暗がりへ動き出した。『きっと楽しい冒険が待っていますよ!』
「『冒険』……」
確かに、ちょっと不気味で、ちょっと好奇心をくすぐられる。
俺はレイやピエール33世と共に、ウラヌスの街へと歩き出した。
ウラヌスが、黒っぽい変わった街になったのは、『スチームパンクっぽさ』を出したかったからです。他の街は既に雰囲気が決まっていたので、ウラヌスに持ってくるしかなかったとも言えます。




