014話 5月11日#07
再び、俺の家に困った客が来た。
『いやホント、申し訳ないです!』
「やっぱりこのお茶、美味いな」
「……あんたら、」俺はため息をついた。「昼間どこほっつき歩いてたんだ?」
「うーん……街道?」
レイは首を傾げた。
『最初のうちは、広くていかにもメインストリートって感じのところを歩いてたんですが、気がつくと、細くて分岐の多い道を彷徨っていて……』
ピエール33世はもごもごと説明した。
「飛んで行かなかったのか?」
『ええ。さすがに真っ昼間に飛んでたら、注目されちゃいますからね』
――まあ、それも一理あるけど。
「でも、迷子になるくらいなら、最初から飛んでいれば……」
「飛んでても、迷うときは迷う」
レイはきっぱりとそう言い切った。
「……だから、それも旅の醍醐味ということで」
『ですね!』
「お前らなあ……」
――やっぱり、何か放っておけない。
「そもそも、どこへ行くつもりだったんだ?」
「街の外?」
『ワタクシ的には、いちおう北の方へ行こうとしたのですが……』
――そこからして、ぼんやりしすぎていたようだ。
「……じゃあ、明日の朝地図を買いに行くか」俺は頭を掻いた。「それで、『石』はどこにあるか、見当はついているのか?」
『今朝も言いましたが、基本的に、それぞれに対応する星霊使いの近くに落ちたはずです』と、ピエール33世は言った。『だから、星霊使いを探せば、自ずと『石』も見つかるはずなんです』
「じゃあ、星霊使いはどこにいるんだ?」
『それは……わかりません』
俺はため息をついた。
『あ!でも、よっぽどのことがない限り、故郷から離れることはないと思いますよ!』
「星霊使いの故郷はすぐにわかる」と、レイは付け加えた。「星霊使いの候補になる子どもは、1つの故郷に生まれた子の中から選ばれるからな」
『ここから一番近い候補地は『ウラヌス』です。みずがめ座の星霊使いさんの故郷ですよ』
「ウラヌス……確かにここの北の方にあるけど……」
――そこまでは、結構な距離があるのだが。
「そもそもこの街ってどこ?」レイが真顔で俺に訊ねた。
「『ケレス』だよ。知らないでここにいるのか?」
もはや『方向音痴』のレベルを超えている。
「おう、そうか。わかった。それじゃあ明日は北に向かって……北ってどっち?」
『えーっと……』
「……よし。俺も行くわ」
2人は「え?」と、こちらを振り返った。
「このまま2人を放っておけないし……何より、まだまだ学べることもありそうだからな」
――主に、魔法対策について。
『なんと!一緒に旅を……!』
ピエール33世はライトの色をピンク色に光らせ、その場でくるくると回った。
「……ただ、1つ注意してほしいのは、」俺はしっかりと念を押した。「来月下旬にある試合の前までに、ここへ帰らせてほしい」
『試合……?』
「俺、これでも闘技士なんだよ」
「へえ。強いのか?」レイは少し興味深そうに訊ねた。
「まあ、一般的な若い男と比べると、かなり強い方だっていう自負はある」
『それは、なかなか頼もしいです!』
ピエール33世は俺とレイの間にやって来ると、ウィーンと音をたてて、体の右側からアームを伸ばしてきた。
『こういうのは、勢いって大事ですよね!』
「確かにそういうこともあるな」何がしたいのか理解して、俺はアームの上に手のひらをかざした。「俺も、勢いで突っ走るタイプだから」
「私は本を読んで寝られるなら何でもいいけど」レイも俺の手の上に右手を重ねたが、あんまり意味わかってない気がする。「だから、さっさと終わらせたい」
『というわけで〜!』ピエール33世はもう1つアームを伸ばし、俺とレイの手を挟んでから、上へ投げ飛ばした。『3人で協力して頑張りましょう!』
「おーー!!」
『おーー!!』
「お……おー?」
――何にせよ、こうしてこの3人の旅は始まった。
カイトが旅をする決心をするところです!まさにこれから、『石』を求めて各地を旅していきます。
さて、一体どんな出会いや出来事が待ち受けているのか……
ところで、後々出てきますが、『モンスター』や『空賊』など、この世界ならではのいろんな危険が旅人を邪魔してきます。それらに対抗できるのは、武器や兵器、魔法などのスペシャリストたち。旅をするのに『戦う力』は必須なんです。




