013話 5月11日#06
俺は、灰色マントたちを撒くことができた。
夕方5時頃に自宅へ帰り、ベッドの上に寝転んだ。
「あー。疲れた……」俺は服のポケットから『石』を取り出した。「でも確かに、魔法の詠唱も聞いて理解ができるんだな……」
『石』は相変わらず、ほのかに緑色に光っている。
「……でもこの『石』に、あんなふうに空を飛ぶ力もあるのか?レイもピエール33世も、何でそのことを教えてくれなかったんだろう……?」
よくわからないことは、もう一つ……
「あの『ピース教団』とかいう団体……初めて見たけど、一体何なんだろう?」
あの後、街中で警官を見つけて通報したのだが、その時こんなことを言われた。
「確かに怪しい活動をしている団体で、我々も注視しているのですが、実態を把握しきれていないのが現状で……」
――しかも、昨日あんな騒動があったので、今すぐ捜査するのは難しいと思います。
俺は天井をぼーっと見つめていた。
「あの2人……どこ行ったんだろう?」
他の『石』を集めるって話だったけど……
「それ以前に、ちゃんと飯食って寝られるんかな……?」
――妙に心配になってきた。
「何か気になって、今夜は寝付けそうにないな……」
――そういえば、闘技士の契約打ち切り問題もあった。俺は他に、日雇いのバイト以外の仕事はしてないため、本当に打ち切られたら生活に困窮する可能性がある。
頭の中を謎や心配事がぐるぐるしている。こんなこと、昔はなかったんだが……
「……とりあえず、風でも当たるか」
俺は立ち上がると、アパートの屋上に向かって歩き出した。
――オレンジ色の建物にオレンジ色の夕日!なかなか映えてるんじゃないか?
レイの言葉を思い出しながら、俺は海に沈む夕日を見つめた。海風の気持ちいいこの街は、俺の故郷よりもはるかに美しい。
――とは思うのだが、そういえばここと故郷以外の街へ行ったことはほとんどない。
「レイは『さすらいの旅人』とか言ってたし、ピエール33世は神様だし、俺よりよく知ってるんだろうな……」
そういうことを考えていると、何だか自分が小さな世界に閉じこもっている気分になった。
「……この俺が悩むなんてな」
ふんわり海の香りのする風が、心配事を吹き飛ばしていく。
「とにかく、次の試合はひと月後なんだ。ひと月あれば、どうにかなるだろ」
他のことは、俺が心配しても何も始まらないことだし。
「そうだな。悩むのは止めた」自分の頬を叩いて気合を入れる。「これから何をするか。それだけを考えよう!」
――うっし!まず考えるべきは金策だな。バイトを探して、それから……
その時、誰かが俺の左肩をトントンとつついた。俺は後ろを振り返って、驚きのあまりカチコチに固まってしまった。
「どうも!またお世話になります!」
『実は道に迷っちゃいまして……気づいたらここに帰ってきちゃいました!』
――レイとピエール33世だった。
「……は?」
「とりあえず、今夜もここに泊まらせてください!」
『明日こそ、ちゃんと出立するので!』
「…………はあああ!?」




