表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
ケレス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/45

012話 5月11日#05

 「ね?すごいでしょ?」ピエールはそう言って地上に降り、俺に『石』を返した。「こんなことできるなんて、きっと教えてもらってないですよね?」


 「確かに……」


 「これは、『ドゥファン様の加護』があるものにしかできない技術です。どうでしょう?その『石』で、自由自在に空を飛んでみませんか?」


 「うーん……」


 「『ピース教団』に加入していただければ、我々が詳しい使い方を教えて差し上げます。きっとあなたもマスターできますよ!」


 「そうか……」


 「加入の手続きは簡単です。この紙に名前を書いていただければ……」


 「紙に名前……」



 俺はぼーっとしたまま、ピエールから紙とペンを受け取った。



 「難しいことではありません。『ピース教団』はあなたを歓迎いたします」


 「………………」


 「どうしましたか?恐れる必要はありません。ただ紙に……ぐほっ!」



 俺は素早く紙とペンを放り投げてピエールの懐に飛び込み、腹に鋭い膝蹴りを食らわせた。



 ――ちなみに俺は学生時代の、剣以外の『槍術』とか『弓術』とか『体術』とかの科目も、1位2位を争うほど優秀な成績だった。筆記科目はボロボロだったけど。



 「人の剣を取り上げたまま、そんなことを言うなよ」俺はそう言って、ピエールの手から剣をもぎ取った。



 その直後に俺は地面を蹴り、ピエールたちがいるのとは逆の方向へと走り始めた。



 「こ、この……!」ピエールは腹を抱えたまま、その場に膝をついた。「追いかけてください!『石』を取り上げるのです……!」



 それを聞いたピエールの仲間たちは、一斉に俺を追いかけ始めた。



 「ちっ!人数が多い……」団員たちが散開したのを見て、俺は舌打ちをした。「もしあいつらが魔術師だったら……!」



 そしてさっそく、俺の目の前に1人が立ち塞がった。そいつは両腕を前に伸ばし、呪文の詠唱を始めた。



 「『世界を取り巻く7つの海……その恵みの水は一つの滝となり、天上から彼へと降り注ぐ……』」


 「……え?」



 俺は急ブレーキをかけた。俺の頭の斜め前に、地面と平行になるように、青く光る魔法陣が現れた。


 魔法陣から、滝のように大量の水が落ちてくる。



 「うわ!」俺は水に弾かれ、勢いで尻もちをついた。



 結構痛かったが、俺はすぐに立ち上がって、前へ突進していった。


 水の魔法を放った団員は、咄嗟に俺を捕まえようとしたが、その前に俺に突き飛ばされ、地面に転がった。



 「……さっきのは、何だったんだろう……?」






 しかし、それから1分もたたないうちに、別の団員が俺の後を追いかけ始めた。



 「足、速ぇ!」



 その団員は、器用に走りながら呪文の詠唱を始めた。



 「『地獄で罪人を包む巨大な火の球……それは前へと飛び、彼の後ろを追いかける……』」



 それを聞いた俺は、今度はすぐに反応し、前へ倒れるように地面に伏せた。


 数秒後、めっちゃ熱い炎の球が、俺の頭をかすめるように飛んでいった。



 「何だろう……呪文の意味がわかる……?」



 団員はすぐに俺に追いつき、俺の腕を掴んだ。そして、別の魔法の呪文を唱えようとした。


 俺は、相手が呪文に集中した隙をついて手を振り払い、ついでに相手の腹を殴って沈黙させた。






 そのすぐ後に、2人の団員が俺を挟み撃ちにしようと近づいてきた。


 2人は同時に、呪文の詠唱を始めた。



 「『渓谷で吹きすさぶ風……強力な風は彼の周囲で渦を巻き、彼を引き裂く剣となる』」


 「『大地に眠る巨大な火山……その恩恵は溶岩となり、彼の足元を溶かし動きを封じる枷となる』」



 2つの魔法陣が、俺の足元と頭の上に現れ、光を放ち始めた。


 俺はその場でジャンプして、手近な開いている窓の枠に手を引っ掛けた。その直後、地面が溶岩みたいに赤くなり、ぐつぐつと煮えたぎり始めた。


 すぐに旋風が、渦を巻いて俺に襲いかかってきた。



 「……そうだ!」



 俺は壁を蹴って、吹き上げる風に乗ってみた。



 ――俺の体は、建物の屋上あたりまで浮き上がった。



 俺は素早く柵に手をかけ、屋上へと乗り込んだ。



 「え!?」


 「うそ!?」



 2人が驚いて叫ぶ声が、俺にも聞こえてきた。



 「す、すげー……」俺は屋根に着地して走り始めながらつぶやいた。「これが『石』の力……魔法を初めて避けられた……」



 しばらく俺は、屋根の上を走り隣の屋根まで飛び越えを繰り返して、ちょうど屋根から地面まで続く階段の付いた建物を見つけたので、その階段を下りていった。

ピエールが『石』をカイトに返した理由は、「カイトを懐柔できたと思ったから」らしいです。頭の回らない人物です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ