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月と星座と剣士の旅〜魔法が苦手な俺が、魔法で神様を救う話〜  作者: く~が~
バッカス編

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106/122

106話 5月23日#17

 レイの魔法を使って屋上へたどり着くと、ちょうどデーンさんを見つけた。何やら一人乗りの大型ドローンに乗り込もうとしている。



 「ちょっと待った!」俺はデーンさんに向かって走っていった。「あんたには、いろいろ言いたいことがある!」


 「来るな!」デーンさんは焦っているようだった。「君たちみたいな挑戦者は初めて見た……!」



 ドローンは、デーンさんを乗せて飛び上がろうとする。大風が舞い、回転翼(ローター)の回る大きな音も聞こえる。



 「あたしに任せて!」俺の肩の上に乗っているリアの、騒音に負けない大きな叫び声が聞こえてきた。「『サンダーショット:フルメン』!!」



 リアの小さな矢は、放たれた瞬間に大きくなり、ドローンに突き刺さった。直後、ローターの真ん中に雷が落ち、ドローンは屋上に落下した。


 デーンさんは勢いでドローンから転がり落ちた。そこに俺が走り込み、顔を上げたデーンさんは、引きつった顔をした。



 「……何でこんなことした!?」


 「べ、別に大した理由は……」


 「答えろ!!」


 「ちょっとした『遊び』だよ!自分から遊ぼうとしないから、強制的に遊ばせようと思って……GAME OVERになったら『ペナルティ』として持ち物を回収……ぎゃふ!」



 俺はデーンさんを蹴り飛ばした。デーンさんはその場に倒れ、そのまま動かなくなった。



 「……それだけで済むんだから、よかったと思えよ!」



 俺は壊れたドローンの中から、俺の剣と、テンの銃と帽子を見つけた。



 「ま……待って……」デーンさんが、何とか立ち上がろうとしていた。「私が悪かった。謝るから……カジノで遊んで……?」


 「『世界を取り巻く7つの海。その恵みの水は一つの滝となり、天上から彼へと降り注ぐ!』」



 テンは早口で呪文を唱えて、指をパチンと鳴らした。



 ――すると、デーンさんの頭上に、滝のような水流が降り注いだ。



 「………………」



 びしょ濡れになって沈黙したデーンさんを放置して、俺たちはレイの魔法で地上へ降りた。

 


 「結局……あたしたちから物を盗もうとしていた……?」


 「ろくでもない領主よね!」


 「……体が痛い……早く寝たい……」






 「今日はマジで疲れた」


 「なんだかんだで、朝から夕方まで激しく動き続けたからね」


 「体は痛いし……腹は減るし……」


 「昨日だって、ちゃんと休めてなかったのに!」


 「災難……続いた……」



 俺たちは現在、ピエール号の中にいる。誰も使っていない飛空艇発着場(ポート)に係留させて、その中で羽を伸ばしていた。



 「……たく、最初からこうすればよかったな」



 俺はリビングの絨毯の上に寝転がっていた。



 「そうだねー……」テンは椅子に座って、遠い目をしていた。「まさか君たちを助けただけで、こんな目に遭うとはねえ……」


 「本読みたいけど、眠い、腹も減った……どうしたら……」レイはテーブルに突っ伏していた。


 「ねえ……旅って、こういうものなの?」リアは、ソラに(くし)で髪を()いてもらっていた。


 「たぶん……違う……」ソラは、自分の膝に乗るリアの後頭部を見つめたまま、機械的に手を動かしていた。



 俺たちはしばらく気が抜けた状態でぼんやりしていたが、やがてピエール号の『ごはんができましたよー!』という声で生き返り、立ち上がった。



 『今日の夕飯は、疲れた体に優しいリゾット!お供にカモミールティーを用意しました!これで今夜はぐっすり眠れるはずです!』


 「わお!さすが!」



 ――リゾットの米がめっちゃキラキラしてて、美味そう!



 「「「「いただきまーす!!」」」」


 「わあ!うっまっ!」テンが手で口元を押さえている。「神様って、こんなに料理が上手なんだ!」


 「ホントに、ほっぺたが落ちるわね〜♡」リアは小さなカップに入った米の粒を、小さなスプーンで小分けにして食べていた。


 「こんな美味しいごはん……久しぶり……」ソラも表情はわかりづらいが、嬉しそうにしていた。


 『みなさん!お褒めいただき、ありがとうございます!ワタクシも、テンション上がっちゃってます!!』


 「………………おかわり」



 黙々と食べていたレイは、素早く皿を突き出した。



 「食べるの早えな……」


 『おかわりもありますので!どんどん食べちゃってください〜〜!!』



 ――それにしても。


 最後にこんな賑やかな食事をしたのは、いつ頃だろうか。


 レイ1人と一緒に食べるのもなかなか楽しかったが、これだけ人数が増えると、また少し雰囲気が違ってくる。


 俺は、孤児院での食事の風景を思い出した。一緒にそこで食べていた、他の孤児たちの顔も。


 過去を懐かしく振り返りながらも、その頃とは異なる面々と食べることになった不思議な経緯を振り返っていた。

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