010話 5月11日#03
こうして、俺たち3人は近くの食堂へ足を運んだ――というか、月の神のその姿……
「……ロボット?」
球体に一つカメラが付いている、ドローン型ロボットのような姿をしていた。つやのある真鍮のような色で、どこからどう見ても『神様』らしさがない。
ドローン型の月の神は、カメラの周りと、真鍮|(?)の板の境界がピンク色に光っていた。
『いやあ。流石にムシの姿じゃ、みなさんを驚かせちゃいますからね』
「人間にはなれないのか?」
『なれますけど、それはそれで困ると思います。「アナタ誰?」って言われた時に』
――まあ、それもそうだな。
『ワタクシ、一度ロボットになりたかったんですよー!』月の神は嬉しそうだ。『今まで機会がなかったんですけど、やっぱり楽しいですね〜!』
「まあ、楽しいならそれでいいんだけど」
『……あ、で、で!ワタクシのことは、これから『ピエール33世』と呼んでください。神様呼ばわりだと変なんで!』
「……『33』って数字はどこから?」
『気分です!』
――まあ、楽しいならそれでいいんだけど。
俺はその後の話を聞きながら、街の様子を眺めた。
――ここ『ケレス』は国内最大の大都市。いろいろな技術が詰め込まれたいろいろなものが、この街には溢れている。
『魔巧ロボット』もその1つ。『人』や『ドローン』、犬、猫のような『ペット』の形をしたものが、街なかの人混みの中で普通に見られた。
他にも、『錬金術』で髪を好きな色に染めている人、主に機械の動力源として使う『魔法石』を売っている店、『魔巧学』と『錬金術』の合わせ技である『自動水生成機』のスタンドなども点在している。
それらが昔ながらの煉瓦造りの建物の中に溶け込んでいる様子を見ていると、何かノスタルジックな感覚が満ちてくるなあ、と俺は思っている。
『……というわけで、『石』の魔法って、結構重要なものなんですよね』
「それで、この『石』はどうしたらいいんだ?」俺は『リブラの石』を取り出し、前にも言ったような質問をレイにぶつけた。
「ああ。何度も言うけど、持ってていいぞ」レイは、俺が差し出した『石』を押し返した。「他の『石』を集め終わったら、ここへ戻って回収する」
『そうですね』ピエール33世も、全身でこくこく頷いていた。『あと、あまり『石』を外に出さないでください。誰かに盗られるかもしれないんで』
「あ、すまん」俺は『石』を服のポケットに入れた。
「ま、心置きなく利用しててくれ」
「そこまで言うなら……」
――でも、これ欲しがる人なんて、この世にいるのだろうか?
「うん、美味かった!」レイはそう言って、スプーンをテーブルの上に置いた。「じゃ、出発するか!」
『そういうわけで、お世話になりました!カイトさん、また会いましょう!お元気で!』
「あ、ああ……」
2人は突然席を立ち、あっという間にいなくなってしまった。
「大丈夫なのか、あの2人……?」
今更ながら、少し不安に思った。
『魔巧学』は、この世界の『機械工学』です。ロボットや飛空艇などの乗り物だけでなく、生活のあらゆる場面で『魔巧機械』が活躍しています。めっちゃ便利です!




